
診療放射線技師になるには国家試験の合格が必須です。目指すにあたって難易度や試験の合格率は大切な指標のひとつ。そこで今回は診療放射線技師になるための方法や試験合格のために必要な対策などをご紹介します。
診療放射線技師になるには?

診療放射線技師として働くには、厚生労働省が管轄する国家試験に合格し資格を取得する必要があります。合格者は免許申請後に厚生労働省で診療放射線技師籍として登録され、この段階で初めて資格者となり、診療放射線技師として働けるようになります。
受験資格を得る方法
国家試験は誰でも受験できるわけではありません。以下を満たす方のみ、受験資格を得られます。
・学校教育法の規定により大学に入学できる人
・診療放射線技師教育機関(※)で3年以上必要知識・技能を学んだ人
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※文部科学大臣指定の大学・短期大学、都道府県知事が指定した診療放射線技師養成所
一つ目の「大学に入学できる人」は、高校・中学校を卒業した人、もしくは通常課程による十二年の学校教育の修了した人、文部科学大臣により同等以上の学力があると認められた人です。診療放射線技師教育機関に入る時点で満たしていることがほとんどでしょう。
その後、国が指定した診療放射線技師教育機関で規定の時間数を取得する必要があります。最低でも3年は必要なので、特に社会人になってから診療放射線技師の資格取得を目指す場合は注意しましょう。
また、例外として外国で規定の知識や技能を習得した人も受験可能です。
・外国で診療放射線技術に関する学校を卒業した人
・外国で診療放射線技師免許に相当する免許を受けた人
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診療放射線技師免許に相当する免許を持っていても、日本の試験を再度受け直さなければならないので注意が必要です。
診療放射線技師になるための費用
診療放射線技師を目指す際には、国が指定した教育機関での学費や、国家試験の受験料が必要です。以下は、国公立大学、私立大学、専門学校の学費です。
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入学金 |
年間授業料 |
総額 |
国立大学 |
282,000円 |
535,800円 |
約2425,200円 |
公立大学 |
391,305円 |
536,363円 |
約253,6757円 |
私立大学 |
約20〜40万円 |
約100〜180万円 |
約415〜710万円 |
専門学校(昼) |
200,000円 |
936,000円 |
1,777,000円 |
専門学校(夜) |
250,000円 |
681,000円 |
1,477,000円 |
※文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」より
※公益社団法人東京都専修学校各種学校協会「平成 30 年度 学生・生徒納付金調査」より
私立大学、専門学校の学費は施設や設備、教育内容などによって大きく異なります。また、学費以外に実習費や教科書代が上乗せされる場合があるでしょう。さらに、国家試験の受験料が11,400円かかります。
診療放射線技師になるための私立大学のみのデータがなく、学校により差が大きいことから、このような書き方としました。200,000〜400,000円と統一すべきか悩みましたが、見た目がかなりゴチャゴチャしてしまうため、コンパクトにいたしました。
診療放射線技師国家試験の概要
診療放射線技師試験を受けるにあたって知っておきたい受験資格や試験日程、試験地についてご紹介します。受験する試験の日程に合わせてスケジュールを立てていきましょう。
試験日程
診療放射線技師の国家試験は、毎年2月中旬~下旬に実施されます。
合格発表は約1か月後の3月下旬ごろで、厚生労働省のホームページに掲載される形です。
願書は10月下旬ごろに配布開始し、郵送もしくは厚生労働省の窓口から請求できます。郵送の場合、問い合わせてから届くまでに1週間ほどかかるので注意が必要です。12月中旬から1月初めの受付期間に間に合うよう、必要書類や証明写真などを用意しましょう。
また、視覚・聴覚障害などにより受験時に配慮が必要な人は、11月下旬までに申請書を提出する必要があります。忘れないよう必ず事前に確認しましょう。
試験会場
北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県 |
上記の 8都道府県から自分で選択します。
住まいによっては前泊が必要なため、ホテルの確保も含めて、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
なお 、法改正前の「診療エツクス線技師試験」または「特例試験」の合格者で、試験科目の免除を受けて診療放射線技師国家試験を受ける人は、東京都以外での受験はできないので注意が必要です。
試験科目
試験科目 |
出題割合 |
内容 |
基礎医学大要 |
15% |
人体の構造や機能、主要な疾患の成り立ちについての理解が求められる科目です。 解剖学や生理学、病理学の基本的な知識が必要となります。 |
理工学・放射線科学 |
18% |
放射線の物理的性質や放射線が生体に与える影響、放射線の安全な取り扱いに関する知識が問われます。 物理学、化学、放射線生物学の理解が必要です。 |
エックス線撮影機器学 |
10% |
エックス線撮影装置の構造や原理、操作方法についての知識が求められる科目です。 機器の適切な使用と保守に関する理解が必要です。 |
エックス線撮影技術学 |
10% |
エックス線撮影の技術や手順、撮影条件の設定など、実際の撮影技術に関する知識が問われます。 解剖学的な理解と撮影技術の応用力が必要です。 |
診療画像検査学 |
10% |
CTやMRIなどの画像診断装置の操作方法や検査手順、画像の評価方法についての知識が求められます。 各種モダリティの特徴や適用分野についての理解が求められます。 |
画像工学 |
3% |
医用画像の生成や処理、解析に関する技術的な知識が問われる科目です。 画像のデジタル処理や品質管理に関する理解が求められます。 |
医療画像情報学 |
5% |
医療情報システムやPACS(医用画像保存通信システム)など、医療現場での情報管理や運用に関する知識が求められます。 情報セキュリティやデータ管理の理解が必要です。 |
核医学診療技術学 |
10% |
放射性医薬品を用いた診断や治療の技術、PETやSPECTなどの核医学検査の原理と手法についての知識が問われます。 放射性物質の取り扱いと安全管理の理解が必要です。 |
放射線治療技術学 |
10% |
がん治療における放射線治療の技術や計画立案、線量分布の評価などに関する知識が求められます。 治療装置の操作や患者の安全管理の理解が必要です。 |
放射線安全管理学 |
5% |
放射線の安全な取り扱いや被ばく管理、法的規制など、放射線防護に関する知識が問われます。 職業被ばくや公衆被ばくの管理に関する理解が必要です。 |
医療安全管理学 |
4% |
医療現場における安全管理やリスクマネジメント、医療事故防止のための対策などに関する知識が求められます。 患者の安全と医療品質向上の理解が必要です。 |
診療放射線技師国家試験の試験科目は全部で11 科目です。2024年4月に施行された診療放射線技師法施行規則の改正により、2025年の試験から科目数が14科目から11科目に変更されました。
出題数は合計200問で、各科目5~20問ほどずつ出題されます。回答方式はマークシートの選択式で、1問1点の200点満点です。
法改正前の「診療エツクス線技師試験」または「特例試験」の合格者は、試験時に以下 の科目の免除を受けられ ます。
基礎医学大要、理工学・放射線科学、エックス線撮影機器学、エックス線撮影技術学、画像工学及び放射線安全管理学 |
診療放射線技師国家試験の合格率
実施年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
2025年(第77回) |
3,729人 |
3,159人 |
84.7% |
2024年(第76回) |
3,565人 |
2,834人 |
79.5% |
2023年(第75回) |
3,224人 |
2,805人 |
87.0% |
2022年(第74回) |
3,245人 |
2,793人 |
86.1% |
2021年(第73回) |
2,953人 |
2,177人 |
73.7% |
※厚生労働省「第73~77回診療放射線技師国家試験の合格発表について」より
厚生労働省が発表した診療放射線技師国家試験の合格率は、受験者全体で約70~80%です。試験実施年度によって試験の難易度が異なるため、合格率には多少ばらつきがあります。
新卒者の合格率
実施年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
2025年(第77回) |
3,139人 |
2,893人 |
92.2% |
2024年(第76回) |
3,208人 |
2,767人 |
86.3% |
2023年(第75回) |
2,874人 |
2,704人 |
94.1% |
2022年(第74回) |
2,613人 |
2,447人 |
93.6% |
2021年(第73回) |
2,528人 |
2,092人 |
82.8% |
※厚生労働省「第73~77回診療放射線技師国家試験の合格発表について」より
診療放射線技師の国家試験受験者のうち新卒者のみのデータで見てみると、受験者全体の約8~9割が新卒者であることがわかります。合格率は約80〜90%と、全体の合格率よりも高い傾向です。
>既卒者の合格率
実施年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
2025年(第77回) |
590人 |
266人 |
45.1% |
2024年(第76回) |
357人 |
67人 |
18.8% |
2023年(第75回) |
350人 |
101人 |
28.9% |
2022年(第74回) |
632人 |
346人 |
54.7% |
2021年(第73回) |
425人 |
85人 |
20% |
※厚生労働省「第73~77回診療放射線技師国家試験の合格発表について」より
診療放射線技師の国家試験受験者のうち既卒者のみのデータで見てみると、合格率は約20~50%と新卒者に比べ大きく差があることがわかります。また受験者全体のうち既卒者は1~2割程度と少数派です。
診療放射線技師国家試験の難易度

診療放射線技師国家試験の難易度は、比較的易しい傾向にあります。 出題範囲は広いものの、合格基準は「6割(200点満点中120点)以上の得点」かつ「0点の試験科目が1科目以下」とそこまで高いものではありません。基本的に大学や短期大学の授業で学んだ内容がしっかり身についていれば、十分合格できるレベルといえるでしょう。
また、「診療放射線技師」という名称に法改正される前の「診療エツクス線技師」もしくは「特例試験」の資格を持っている試験科目一部免除受験者は、「98点満点中59点以上」かつ「0点の試験科目が1科目以下」という合格基準です。
他の医療系の国家試験と比べた難易度は?
医療従事者を目指すとき、他の職種も気になるものです。ここでは診療放射線技師と他の医療系国家試験を比較した際の難易度について解説します。
薬剤師 と難易度比較
第109回(2024年)薬剤師国家試験の合格率は、68.4%でした。例年の合格率は70%前後を推移しています。新卒に限った薬剤師国家試験の合格率は84.36%と高い数字を表しているものの、6年制の国家資格であり受験資格を得るまでのハードルが高いことからも、薬剤師の資格取得難易度は高いと言えます。
看護師と難易度比較
第113回(2024年)看護師国家試験の合格率は87.8%、新卒に限ると93.2%と高い数字です。全体合格率は例年90%前後です。
看護師国家試験の受験者は約63,000人、診療放射線技師国家試験の受験者は約3,500人と大きく差があります。診療放射線技師の合格率と比べて合格率が高い理由として、需要の高さや受験者の学習環境が整っていることなどが挙げられます。
臨床検査技師と難易度比較
第71回(2025年)臨床検査技師国家試験の合格率は84.6%、新卒に限った合格率は94.0%です。全体合格率は70〜80%で推移しており、診療放射線技師の合格率とほぼ同じです。
診療放射線技師国家試験の合格に向けた対策方法
診療放射線技師の国家試験に合格するためにはどんな対策をすればよいのでしょうか。学校での勉強と併せて、本番のおよそ1年前から始めたい 対策方法をご紹介します。
問題集を解く
まずは基礎固めとして問題集を1冊解きましょう。最初から過去問に取り組むと、問題と回答をただ丸暗記してしまい、本質的な理解が深まりにくい可能性があります。
問題を解いたら、解説をしっかり読み、間違えた箇所は対応する参考書の該当ページで確認しましょう。理解の浅い部分を補い、知識を体系的に身につけることができます。
過去問を繰り返す
試験の半年ほど前から 過去問 を繰り返し勉強して、出題パターンに慣れておきましょう。最低でも過去5年分、できれば10年分の問題は繰り返し解き直して完全に理解しておくと安心です。
ただ解くのではなく、問題に出てくる語句の意味を確認しながら進めることで、本番の問題でも生かせる知識が身につきます。解説を読んでも分からない問題やどうしても苦手な試験範囲は、教科書を読むなどして勉強し直しましょう。
模試を受ける
診療放射線技師教育機関の多くは 一定のペースで模擬試験を実施しています。
模試を受けることで時間配分を意識した問題の解き方や科目ごとの自分の得意不得意がわかってくるでしょう。結果だけ見て満足せず、しっかり解き直すことが大切です。答えではない選択肢に関しても、「なぜ正解 ではないのか」という観点で間違い探しをすると、試験で生かせる知識が身につくでしょう。
また十分勉強したつもりでも、年に1度しかない試験の本番はどうしても緊張するはずです。早い段階から模試に挑むことで本番に近い雰囲気で問題を解くことに慣れておきましょう。
外部で開催する全国模試も受けておくと、全国の受験者と習熟度を比較できるためさらに効率よく勉強できます。
診療放射線技師に関するよくある質問
ここでは、診療放射線技師に関するよくある質問に回答します。
・診療放射線技師に合格したら給料は高い?
・診療放射線技師の国家試験合格後にはどんな仕事をする? |
診療放射線技師に合格したら年収は高い?
国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」によると日本の平均年収は、460万円です。令和5年賃金構造基本統計調査によると診療放射線技師の賃金は、月給367,400円、年間賞与960,900円であり、年収は約537万円です。
診療放射線技師の平均年収は、日本の平均年収より約80万円高くなっています。また、年収は勤務先の規模や地域、経験年数、資格の有無などによっても変動します。
例えば、大規模な病院や都市部での勤務、または高度な専門資格を持つ場合、さらに高い年収が期待できることもあるでしょう。
診療放射線技師の国家試験合格後にはどんな仕事をする?
診療放射線技師は、放射線機器を扱う検査や治療の専門職です。医師の指示に基づき、X線やCT、MRIなどを使った検査を行い、病変の発見や診断をサポートします。放射線治療や画像処理、検査機器の管理業務や放射線を用いない超音波検査や眼底検査も行います。高い専門性と正確な操作が求められる職種です。
診療放射線技師の国家試験はしっかり対策すれば合格できる!
診療放射線技師になるためには、国家試験への準備が重要です。試験は多岐にわたる知識が問われますが、過去問題の分析や効率的な勉強方法など適切な対策により合格の可能性が高まります。確かな技術と知識を身につけることで、医療機関から一般企業まで幅広い業界で活躍できるでしょう。
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