胚培養士とは?なるには資格が必要?仕事内容や給料・向いてる人の特徴

胚培養士とは、不妊治療技術のひとつである生殖補助医療を行うスペシャリストです。資格は不要ですが、認定資格を取得することで経験や実績が評価されやすくなります。本記事では、仕事内容や給料、向いている人の特徴など、胚培養士を目指す方に役立つ情報を記載しています。

胚培養士とは

胚培養士とは、採卵、採精後に卵子と精子を受精させ、母体に戻すまでの期間、胚(受精卵)を扱う専門職です。胚培養士は、主に不妊治療に携わる立場のため、高齢出産が進む日本においては欠かせない職業といえます。

日本産科婦人科学会の報告によりますと、2021年の体外受精をはじめとする生殖補助医療による出生児は、69,797人です。この数字は、全出生児811,622人の8.6%に当たり、2007年の1.8%より、毎年増加傾向が続いています。さらに2022年度からは生殖補助医療として体外受精や顕微授精、男性不妊の手術が保険適用となりました。今後、受診する患者が増えることが予想でき、さらに胚培養士の需要は高まると考えられます。

胚培養士になるには

胚培養士の国家資格はなく、働くにあたり特別な資格は不要です。胚培養士を募集しているクリニックや病院に就職すれば、胚培養士として働けます。ただし、知識や経験がない状態でも誰でも採用されるといった意味ではありません。

胚培養士は、主に臨床検査技師や看護師のほか、生殖機能の研究経験者である「畜産学部・生物学部・動物学部」出身者など、専門性の高いスキルを持つ人が就く傾向があります。特に臨床検査技師は他の検査も兼任できるため、臨床検査技師から胚培養士への道を選ぶ人は多いです。これから胚培養士を目指す場合は、まず臨床検査技師の資格取得をおすすめします。

胚培養士の認定資格

胚培養士には、以下の認定資格があります。

・生殖補助医療胚培養士(一般社団法人日本卵子学会)
・生殖補助医療管理胚培養士(一般社団法人日本卵子学会、一般社団法人日本生殖医学会)

認定資格を取得することで、経験や実績が証明され、胚培養士としてさらに活躍できる可能性が高まります。なお、日本臨床エンブリオロジスト学会が主催していた「臨床エンブリオロジスト認定資格」は、生殖補助医療胚培養士と統合しました。2023年より新規受験を終了しています。

生殖補助医療胚培養士
生殖補助医療胚培養士とは、一般社団法人日本卵子学会が主催する認定資格です。受験対象者は、以下の申請資格をすべて満たす人に限ります。

1.日本卵子学会の会員であり、会費を全納している
2.生物学など関連する大学で学んだ、もしくは臨床検査技師もしくは正看護師の資格を取得している
3.委員会主催の生殖補助医療胚培養士資格認定講習会を受講済み
4.日本産科婦人科学会の登録施設において、1年以上の臨床実務経験がある
5.生殖補助医療に対して高い倫理観と品位を有する
6.最近1年以内に、日本卵子学会学術集会や主催講習会などに2回以上参加している
上記の条件を満たしたうえで、講習会を受け試験に合格したものが生殖補助医療胚培養士の認定資格を取得できます。試験の概要は以下のとおりです。

試験期日 年1回
試験会場 東京都
試験内容 ・筆記試験
・口述試験
費用 60,000円(講習会費も含む)
詳細は、毎年変更となる可能性があります。申請前には、必ず学会のホームページの確認が必要です。

生殖補助医療管理胚培養士
生殖補助医療管理胚培養士とは、一般社団法人日本卵子学会と一般社団法人日本生殖医学会が共同で主催する認定資格です。生殖補助医療胚培養士の上位資格に当たります。

受験対象者は、以下の申請資格をすべて満たす人に限ります。


1.日本生殖医学会と日本卵子学会の会員である
2.5年以上生殖補助医療胚培養士としての臨床実務経験があり、資格取得後も継続して生殖補助医療の業務に携わる
3.博士学位取得済かつ最近5年以内に3編以上の論文を発表済。修士学位取得済の場合は、委員会が博士号取得者と同等以上と認めている
4.生殖補助医療に対する高度な知識と能力、倫理観を有する
5.最近5年以内に2回以上、日本卵子学会学術集会に参加している
6.最近5年以内に5回以上、関連する学会において発表している
7.生殖補助医療胚培養士認定後、日本卵子学会主催の「倫理」の講習を1回以上受講している
上記の条件を満たしたうえで、書類審査を突破し試験に合格した場合、生殖補助医療胚培養士の認定資格を取得できます。

試験の概要は、以下のとおりです。


試験期日 年1回
試験会場 東京都
試験内容 口述試験
費用 30,000円
なお、資格の取得後は原則5年ごとに更新が必要です。

胚培養士の仕事内容

胚培養士の仕事は、主に精子や卵子の体外での取扱いや受精確認です。具体的な内容は、以下のとおりです。

検卵
医師が極細の採卵針を用いて、卵巣内で育った卵胞から卵胞液を吸引して採取したのち、胚培養士が顕微鏡下で、採取された卵胞液から卵を探して回収する作業を「検卵」と言います。卵は「卵丘細胞」に包まれた状態で卵胞液に存在するため、胚培養士は、顕微鏡を用いてすべての卵の回収を行います。回収された卵子は受精が行われるまでの間、培養器で保管します。

胚の凍結・融解
卵巣過剰刺激症候群の予防目的や余剰胚がある場合など、胚の凍結保存が必要な場合の作業も、胚培養士の仕事です。胚をダメージから守るために凍結保護液を使用、さらに液体窒素を使用し、凍結を行います。

また胚培養士は、移植当日、融解液を使用し、胚の融解を担当します。融解後し、医師に引き継ぐまでが胚培養士の役目です。

精子精製
採取した精液には、不純物だけでなく、未成熟精子、奇形精子、死滅精子など、運動性の低い精子が含まれていることが多いです。遠心分離したり、培養液の中で運動能力の高い精子を見つけたりしながら、体外受精や顕微授精などに使用する精子を選び抜きます。

授精
授精とは人工的に卵子の中に精子を注入し、受精卵を作ることです。授精には、以下のような種類があります。

  治療法と胚培養士の果たす役割
体外授精(IVF) 採卵手術により卵子を取り出し、体外で精子と受精させる治療方法。胚培養士は採卵からインキュベーター管理など一連作業を担う。
顕微授精(ICSI) 形態正常かつ運動良好な精子を選別。細いガラス針で精子の運動を止め、卵子に精子を注入する。
人工授精(IUI) 子宮内での受精を促す治療法。胚培養士は、排卵のタイミングに合わせて、細いチューブを使用し、質の良い精子の濃縮精子を子宮内に注入する。

分割確認
体外受精または顕微授精を行った卵子の様子を、翌日確認する作業です。卵子が無事に受精し、胚に成長しているかどうか、さらに胚は順調に細胞分割を繰り返しているかどうかを観察します。

胚が成長するにつれて、培養液を交換したり、pHや温度の調節などを行いインキュベーターの環境を快適に保ったりすることも仕事のひとつです。胚の成長を見守り、無事移植日当日を迎えたら、医師に胚を託します。

胚培養士の給料

胚培養士は比較的新しい職種のため、厚生労働省などが公式に発表している平均年収データはありません。求人サイトの情報から、平均年収は300万円前後と想定できます。日本人の平均年収は約458万円(※1)です。比較すると、少し低めの水準の可能性があります。

しかし、高齢出産が増える日本では、胚培養士は今後さらに必要とされる仕事です。需要の増加に伴い、給料が上がる可能性もゼロではありません。

※1出典:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」)

胚培養士に向いてる人の特徴

胚培養士に向いてる人の特徴は、次のとおりです。

・忍耐力や集中力がある人
・勉強に熱心に取り組める人
・コミュニケーションを大切にする人
・ストレス耐性がある人
・不妊治療に対する思いを抱いている人


胚培養士の仕事は、0.1〜0.25mm程度のガラス針の中に精子が入っている状態で、卵子に挿入するなど、緊張感のある作業が多いです。少しのミスが患者さんたちの人生を大きく左右する可能性があるため、ストレス耐性や忍耐力、集中力が求められます。

また、胚培養士に関する技術や知識は日々進化中です。積極的にセミナーに参加するなど、新しい知識の吸収が求められます。また、不妊治療中の患者さんと接するうえでは、コミュニケーションや思いやりといった精神面の充実も重要です。

胚培養士に関するよくある質問

胚培養士に興味を持った方向けに、仕事のつらさや年収、離職率など、よくある質問と回答をまとめました。

胚培養士はつらいって本当?
胚培養士がつらいといわれる理由は、以下のとおりです。
・細かな作業が多く、プレッシャーによるストレス過多でつらい
・長時間労働がつらい
・妊娠が成功しなかった場合に悲しむ患者さんの様子を見るのがつらい
・自分が妊娠したことで、不妊治療に関わり続けにくいと感じる
精神的・肉体的なつらさに加え、自分の立場の変化によるつらさを感じる声がありました。一方で、不妊症患者に寄り添い、新しい生命の誕生に関われる仕事は、大きなやりがいも得られることでしょう。

胚培養士は年収1000万円を超える?
胚培養士が年収1000万円超えることは、ほとんどないと言えます。多くの場合は臨床検査技師や看護師など、ほかの医療従事者と同等程度です。ただし、高い技術力と知識を持ち、経験豊富な胚培養士の場合、年収1000万円を超える可能性もゼロではないといえます。

胚培養士の離職率は高い?
胚培養士の離職率は、特別高いわけではありません。胚培養士の職場環境と教育の現状の研究(※2)によりますと、新人胚培養士は1年で12.5%,3年で30.1%,5年で42.7%が離職しています。
厚生労働省の新規学卒者の離職状況(※3)では、大卒の新規入職者の3年後の離職率は、31.2%です。比較すると、胚培養士の離職率は平均よりも低いことがわかります。
※2出典:J. Mamm. Ova Res. Vol. 40 (1), 9–14, 2023「胚培養士の職場環境と教育の現状」
※3出典:厚生労働省「>新規学卒就職者の離職状況を公表します」

胚培養士はこれからの日本に欠かせない職種です

胚培養士は、生殖補助医療技術のスペシャリストであり、今後さらに不妊治療がメジャーになる日本においては、ますます欠かせない職種になっていくことでしょう。また、胚培養士は、臨床検査技師からのスキルアップの職種として選ばれることも多いです。
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