
診療放射線技師の仕事内容は医師の指示に基づく検査や治療など多岐にわたります。ここでは、診療放射線技師が具体的にどんな検査を行うのか、どのような場所で働くのかなどを徹底解説。年収や他のコメディカルとの違いについてもご紹介します。
診療放射線技師とは?

診療放射線技師とは医師・歯科医師の指示のもと、放射線治療装置を用いた撮影や検査、治療を行う医療技術職です。放射線を用いた業務全般だけでなく、MRIや超音波検査、眼底検査などの放射線を使用しない検査業務も行います。
日本で放射線を使用したレントゲン・CT撮影などができるのは、医師と歯科医師、診療放射線技師のみです。診療放射線技師法第二十四条(禁止行為) にて、定められており資格を持たない人による人体への放射線照射は違法行為です。
診療放射線技師の仕事内容
診療放射線技師の仕事は検査や治療など多岐にわたります。ここでは仕事内容を4つに分類し、わかりやすく解説していきます。
検査
検査は診療放射線技師のメインの仕事です。医師の指示に基づき実施し、病巣の発見や怪我の状態の確認などに貢献します。X線検査やCTなどの放射線を使用した検査から、MRIや超音波検査などの放射線を使用しない検査まで、ありとあらゆる検査を担当します。
主な検査業務 |
業務内容 |
一般X線撮影(レントゲン) |
胸部、腹部、頭部、手足などにX線を当て撮影する。胸部撮影時には、肺の中や周囲の影、心臓肥大、胸部撮影の場合、腸管内の様子やお腹のガスなどを調べる。 |
ポータブル撮影 |
回診用X線撮影装置を使用し、病室等から動けない患者の側で撮影する。従来は現像による確認が必要だったが、デジタル撮影導入によりその場で確認が可能。 |
乳房X線撮影(マンモグラフィ) |
乳房をさまざまな角度から圧迫しながら撮影し、腫瘍の有無や大きさを調べる。 |
パノラマX線撮影 |
装置が歯の周囲を回ることで、X線が当たり、歯を含むあごの骨の撮影が可能。歯周病や骨折、腫瘍などの状態を調べる。 |
CT検査 |
トンネル状の機械に入り全身にX線を当てることで、体の断面や内臓の3D画像を撮影し、腫瘍の有無や転移を調べる。 |
MRI検査 |
トンネル状の機械に入り全身に電磁波を当てることで、体の断面をさまざまな角度で撮影し、主に臓器における腫瘍の有無や転移を調べる。 |
血管造影検査 |
カテーテルを使って動脈に造影剤を流し込み、血管の状態をX線撮影。医師や看護師の立ち合いのもと行われ、特にチーム医療の重要性が問われる。 |
消化管造影検査 |
物質を透過するX線の作用を使用。バリウム検査や内視鏡検査を併用し、体内情報をリアルタイムに得る。 |
核医学検査(RI検査) |
特定の臓器や疾患に集積する性質がある、微量の放射性物質を含んだ薬品を体内に投与し、体内からの反応を撮影することで、臓器や病気の状態を調べる。 |
超音波検査 |
超音波を体に当て、その反射派(エコー)を画像化することで、内臓の様子を映し出す。骨や肺、脳などは検査できない。 |
骨密度検査 |
X線もしくは超音波を使用して、骨の密度を検査する。骨粗しょう症の予防を目的に行われる。 |
画像処理
CTやMRI等を用いて撮影を行った後は、必要に応じて画像処理を行います。撮影で得られた輪切りの状態の断面画像データには診断の邪魔となる骨や臓器が表示されており、このままでは診断に使えません。ソフトウェアを使用して画像処理を行い、必要な部位のみがわかりやすく表示されるようにするのも診療放射線技師の仕事の一つです。
作成した画像をもとに、病気の有無を確認する「読影」の補助も担当します。病気の診断や治療方針の決定における重要な判断材料となる、撮影・診断に大きく関与する仕事です。
放射線治療
放射線を用いて主に悪性の腫瘍(がん)を治療します。手術や抗がん剤治療と並ぶ、ガンに有効な治療法のひとつです。 ひとえに放射線治療と言っても、体外からがんのある部位に放射線を当てる方法や、抗がん剤治療と並行して行う方法、根治ではなく症状を和らげる目的で行われる治療法など多岐にわたります。
管理業務
医療の現場には欠かせない放射線ですが、使用量や管理方法を誤ると、人体に有害な影響を及ぼします。診療放射線技師は、放射線機器を扱った検査や治療の専門職として、これらが安全に利用できるよう管理・点検を徹底しなくてはなりません。直接、患者の前に立つ業務ではありませんが、患者や病院全体の安全を守るために重要な業務です。
診療放射線技師の勤務先
・総合病院
・診療所・クリニック・医院
・検査施設
・医療機器関連企業
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診療放射線技師は一体どんな職場で働くことになるのでしょうか。診療放射線技師が必要とされる現場を一つずつご紹介していきます。
総合病院
国公立病院や大学病院などの大規模な病院では、基本的に担当が細かく分けられるので、特定の検査工程に従事することになるでしょう。数年間、ずっとひとつの検査機器だけ担当するという場合もあり、その分、高い知識と正確な診断が求められます。病床数も多く経験を積めるので、一つの検査の専門性を高めたい人におすすめです。
診療所・クリニック・医院
診療所・クリニックなどの小規模な施設では、さまざまな検査工程を1人で担当する場合が多いでしょう。多くの検査機器を場面に応じて適切に使い分ける技術が求められます。 この規模の施設では、必ずしも施設内にCTやMRIの装置があるとは限りません。しかし、設置してある場合は高待遇で多くの実践経験を積める可能性があります。
検査施設
病院の健診や検査センター、保健所などの検査施設で検査業務を行います。具体的には胸部X線や胃検診、マンモグラフィ検査、骨密度検査が診療放射線技師の担当となる可能性が高いです。大規模の健診センターではMRIが設置されているところもあります。その他、検診車で企業や学校に行き、健康診断の業務を行うことも。 病院に診察に来た患者ではないので緊急は要しませんが、病気の早期発見ができるかどうかにかかわる重要な仕事です。一日に何十人もの撮影を行うため、手早く正確に進めていく必要があります。
医療機器関連企業・研究機関
企業や研究機関で放射線技術の開発や研究をしたり、医療機器メーカーでアプリケーションスペシャリストとして勤務したり場合もあります。放射線機器に関する専門知識をもとに、放射線技術の安全な発展のための一端を担う仕事です。 検査を行うことはありませんが、診療放射線技師の国家資格を生かせる環境で働けるでしょう。
診療放射線技師の働き方

基本的には日勤体制のため、規則正しい就労時間で勤務できる場合が多いです。しかし、救急病院や小規模で診療放射線技師が少ない病院などでは、休日や夜間に急な患者が入ることも。 勤務先の患者数や診療放射線技師の数によっても働き方は大きく変化するので、職場選びの際は何を重視するかよく考えてから選びましょう。
ここでは、病院で日勤勤務する診療放射線技師のスケジュールを例として紹介します。
8:30 出勤:制服に着替えたのち、始業点検(各装置の電源を入れて動作確認または目視確認)を行います。薬剤の在庫管理、器具点検なども大切な仕事です。
8:40 朝礼:夜間の急患やトラブルなどの連絡事項の共有、他部門との情報共有などを行います。
9:00 診療開始:各診療科医師の指示に従い、外来患者さんの検査を行います。患者さんの容態や心理状態に合わせたコミュニケーションも必要です。撮影後の画像処理、依頼された画像かどうかの確認を行う検像作業なども随時実施します。
12:00 昼食休憩:午前中の外来患者さんの人数や午後の予定によっては、休憩時間が前後することがあります。
13:00 午後診療開始:自力で動けない患者さんの検査では、ポータブルX線撮影装置を使用します。手術室での検査、事故などで緊急搬送されてきた患者さんの検査、CT検査、MRI検査など、やるべきことは多岐にわたります。
16:00 画像処理など:予定検査終了後は、臓器や腫瘍などを3D画像化し解析を行います。必要に応じてカンファレンスに出席し、他職種との連携を図ることも大切です。
17:00 終業:当直担当者に診療状況を共有します。装置の点検や検査室の掃除を行い、終了です。 |
診療放射線技師の年収
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によりますと、診療放射線技師の平均年収は536万9,700円です。平均年収は、月給×12+賞与として計算しました。
月給 |
賞与 |
年収 |
36万7,400円 |
96万900円 |
536万9,700円 |
※厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より
国税庁「
令和5年分民間給与実態統計調査結果」によりますと、給与所得者の平均年収は、460万円です。診療放射線技師の年収は、一般平均と比べ約77万円高いことがわかります。スキルや経験が増える30代以降では、特に高い給料が見込めるでしょう。
診療放射線技師の年収について詳しくはこちら
診療放射線技師のやりがい・魅力

診療放射線技師は、X線、MRIなどさまざまな検査方法を駆使して患部を撮影する、いわば検査のスペシャリストです。仕事においては、以下のやりがい、魅力があります。
・チーム医療に貢献できる
・幅広い業務を担当できる
・知識や技術を磨き続けられる
・待遇が安定している
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診療放射線技師は、経験を積むことで年収が上がりやすく、待遇が安定している傾向にあります。高い能力や責任が求められると同時に、働きがいがある仕事です。
病院やクリニック、健診センターなど、患者さんと直接関わる職場で働くと「ありがとう」と感謝の言葉をもらえることもあります。患者さんの不安を取り除き、健康を支えている実感が得られることでしょう。
診療放射線技師と他のコメディカルとの違い
病院やクリニックで働く職種は、診療放射線技師以外に、臨床検査技師、臨床工学技士、理学療法士など、複数あります。診療放射線技師と各職種の違いや目的について、詳しく解説します。
・臨床検査技師との違い
・臨床工学技士との違い
・理学療法士との違い
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臨床検査技師との違い
臨床検査技師とは、医師の指示のもと、患者さんの体の状態を知るために、血液や尿、手術で得た細胞などを用いて行う検体検査と患者さんに直接機器を取り付け、脳波などの検査を行う生体検査を担当する医療技術職です。
どちらも検査を行う職種ですが、臨床検査技師に比べて診療放射線技師は、患者さんと接する機会が多いためコミュニケーション能力が求められます。検査に不安を感じる患者さんを安心させることも仕事のひとつです。ただし診療放射線技師が行う検査のなかで、MRIなど放射線を使用しない検査は、臨床検査技師も行うことが可能です。
臨床工学技士との違い
臨床工学技士は医療機器のスペシャリストです。医療機器の操作や管理、メンテナンスを行い、ときには手術室で人工呼吸器や人工心肺装置などの操作を行います。患者さんの生命維持管理装置の操作を行うなど、命に直結する業務も多数あるため、治療に直結した職種と言えるでしょう。
診療放射線技師と大きく異なる点は、扱う医療機器の幅広さです。診療放射線技師は、放射線措置やMRIなど特定の装置を扱う一方、臨床工学技士は、医療機器全般を扱います。手術支援ロボットなど最新医療機器に触れる機会もあります。臨床工学技士も患者さんのコミュニケーションがゼロではありませんが、機械と接する時間が多めです。
理学療法士との違い
理学療法士は、医学的リハビリテーションの専門職です。病気やケガなど、体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対し、運動の指導や治療を行います。
理学療法士は、医師の指示のもと、患者の運動能力や日常生活動作の改善を目指し、リハビリプランを作成します。目的は、リハビリを通じた生活の質向上です。一方、診療放射線技師は、疾患の早期発見や治療効果の確認が目的であり、正確な検査が求められます。
理学療法士は長期的に患者さんと関わりますが診療放射線技師は、診断・治療に必要な検査を行うため、長期的に関わるケースはそれほど多くありません。
診療放射線技師に向いている人の特徴
診療放射線技師は、医師・歯科医師を除いて放射線機器による照射が行える唯一の職業です。高い専門性に加え、注意力や好奇心、コミュニケーション能力が求められます。診療放射線技師に向いている人の特徴について、下記に記載しました。
・注意力がある
・学ぶことが好きで好奇心がある
・コミュニケーションが苦手ではない
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注意力がある
診療放射線技師が日常的に使用する放射線は、誤った使い方をすると危険です。検査・治療を行う際、人体に放射線を使用するため、機器の設定や照射の部位を間違えないよう、常に細心の注意を払わなければなりません。
また、CTなど造影剤を使用する検査では、患者さんにアレルギー反応が出ることがあります。機器の設定や使用だけでなく、患者さんの状態にも気を配り、異常があれば即座に検査を中止する必要があるため、常に高い集中力と判断力が求められます。
学ぶことが好きで好奇心がある
医療業界は、頻繁に最新情報が発表されます。診療放射線技師が扱う機器も、年々アップデートされており、タイミングによっては古い機器の入れ替えと最新機器の導入に立ち会う可能性があるでしょう。一からマニュアルを理解して機器を使うこなす力が求められます。
さらに放射線の専門知識だけでなく、画像作成に必要なスキルやコンピューター操作スキル、物理学や生物学に関する知識なども必要です。安全に使用し、患者さんに最適な治療・検査を行うためには、情報や知識のアップデートが求められます。診療放射線技師は、新しい知識の獲得に興味がある人、知的好奇心旺盛な人向きです。
コミュニケーションが苦手ではない
病院やクリニック、健診センターで働く診療放射線技師は、日々さまざまな患者さんと顔を合わせて対応する必要があります。患者さんは、ケガや病気に対し、不安や心配を感じ、ナーバスになっている可能性が高いです。時には、放射線検査の安全性や具体的な治療内容について質問されることもあるでしょう。
診療放射線技師として、正確かつ患者さんの不安に寄り添い、正確な情報提供と不安解消に導く回答が求められます。機械的に業務をこなすだけが、診療放射線技師の仕事ではありません。
また、診療放射線技師は医師の指示に基づいて業務を行うため、医師とのコミュニケーションも必要です。職場によっては、看護師など他のコメディカルと共にワンチームとして動くケースもあります。
患者さんに適切なサービスを提供するには、病院内での連携・意思疎通が重要です。日頃から積極的にコミュニケーションをとり、良好な関係構築を目指しましょう。
放射線技術を扱う診療放射線技師としてチーム医療を支えよう!
放射線技術に関する深い知識をもとに、検査や治療、管理まで行う診療放射線技師。その業務内容は多岐にわたり、放射線技術に関係のない検査まで担当します。患者が自分の病気を適切に知り、適切に治療するために放射線による検査や治療は欠かせません。チーム医療の縁の下の力持ちとして、きっとやりがいを感じられるでしょう。
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