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作業療法士にとって腰痛症患者はなじみ深い存在だ。
患者に対して提供する「徒手療法」や「運動療法」などのケアは「ここからここまで」という明確な終わりがなく、極めて長い付き合いになる。
現在の医療技術では根治不可能な症状に悩み、痛みを抱えて不安がる患者に寄り添い続ける作業療法士の負担は大きい。だが、それだからこそやりがいがあると言える領域ではあるだろう。
ストレッチなどの訓練。マッサージなどのケア。いずれも作業療法士は患者と密にコミュニケーションを取るが、中にはどうしてもリハビリテーションを嫌がる患者もいる。訓練中に痛みが増悪するケースも多々あり、日ごろから不安を抱える患者が拒否反応を示すのは当然なのかもしれない。だが、寄り添う立場にある患者家族や作業療法士にとってはやりきれない側面もあるのではないか。
高齢者には脊柱管狭窄症やヘルニア、腰椎すべり症などの発生率が高い。だが、そもそも痛みがあること自体が通常状態からの逸脱なのだ。これまで根治治療が不可能であるとして保存療法やリハビリテーションを中心としてきた脊椎を中心とする痛み。慢性的に抱える痛みが患者のQOLを著しく引き下げている現実を見れば、医療関係者としても痛みの原因を取り除いてあげたいと考えるはずである。
東京医科歯科大学(TMDU)から2016年8月に発表された新しい遺伝子の働きは、再生医療の分野から腰痛症の治療に新たな光を投げかけた。主にリハビリケアを担当する作業療法士ではあるが、こうした治療法や、その関連情報を患者と患者家族に提供し、根本的に痛みを解消する道もぜひ検討してほしい。

高齢者に多発する脊椎の脆弱化に由来する脊椎疾患、脊椎椎間板ヘルニア等の疾患は患者に慢性的な腰痛、下肢痛を与え、著しくQOLを低下させる。この治療には炎症鎮痛剤やブロック注射、あるいは手術による椎間板除去が一般的だった。だが脊椎の変性を押しとどめられるならば根治治療も可能として進めた研究によって、腱・靭帯特異的遺伝子「Mohawk(Mkx)」を発見した。この遺伝子は椎間板繊維輪の形成に関与しており、マウスを使用した実験ではこの遺伝子が機能している個体と機能していない個体を比較し、脊椎変性の進行度に大きな落差が確認されたと言う。 東京医科歯科大学(TMDU)が発表した研究の成果を簡単にまとめるとこうなる。 まだヒトへの運用方法は確立されていないが、再生医療を用いればこうした遺伝子によって脊椎の老化を食い止め、健康寿命を引き延ばせる可能性は高い。現行の再生医療の領域にもコラーゲンやプロテオグリカンの生成に関連した手法はあるはずだ。 一見無関係に思える治療領域であっても、遺伝子などに踏み込めばつながっているケースは多い。 作業療法士の職分はリハビリテーションであると考えて、「分」をわきまえるべきという人もいるかもしれない。だが、今後はあらゆる医療の領域が情報を共有する時代である。作業療法士も医療の担い手として手を広げるべきだ。そうすれば、きっとこれまで想定もしていなかった場所に自身の活躍の場を見つけられるだろう。市井における作業療法士の需要は高まっているのだから。

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