大人の「塗り絵」は脳を活性化する効果が高い

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作業療法士もレクリエーションにおいて活用することの多い、塗り絵や切り絵、ちぎり絵。中でもぬり絵には、脳の活性化し、集中力や注意力の向上、情緒の安定など、通常の運動器の機能向上訓練だけでは得られない効果があるという。ここでは、そんな塗り絵の効果や「ぬるビリテーション」という画期的なリハビリ方法について詳しく解説していく。

大人の「塗り絵」が持つ効果

・脳の活性化
・集中力・注意力の向上
・情緒の安定
塗り絵は、自分の好きなように色を塗って楽しむことができるため、どの色を使うか選ぶこと、手を動かして塗ることで脳の活性化が期待できる。また、はみ出さないように綺麗に塗りたいと思うことで、集中力や注意力の向上にもつながると考えられている。 大人の塗り絵では、子どもの塗り絵と比べ、絵柄が細かくデザインも成熟したものが多いが、レクリエーションの一環で使用する際には、患者が楽しんで続けられるものを選ぶと良いだろう。

塗り絵による脳の活性化メカニズム

塗り絵はどのように脳を活性化させるのだろうか。塗り絵を行う各段階で、脳のどの部分がどのように活性化しているかを解説する。

■前頭葉
脳の中で最も大きな面積を占める前葉等は、大脳の前部分に位置し、思考・創造・実行機能をつかさどる部分だ。塗り絵のどこに何が描かれているかを把握したり、構図を覚え、塗るための順序を組み立てる時に活性化する。また、手先などの細かな筋肉と連携しているため、指先を使って塗り絵をする際にも盛んに働く。

■側頭葉
側頭葉は言語の理解、記憶などをつかさどる部分である。過去に実際に見た色や形を思い出しながら、塗り絵の下絵を正確に把握しようとする時に活性化する。

■頭頂葉
頭頂葉は頭頂部に位置し、痛みや温度といった感覚をコントロールする働きが備わり、体全体の感覚情報が集まっている部分である。塗り絵全体のバランスを考えたり、どの部分に何が描かれているのか把握する際に活性化する。

■後頭葉
後頭葉は、視覚情報を処理する部分で、後頭部に位置している。お手本を見てどのような絵であるかを認識する際に活性化する。

「ぬるビリテーション」の可能性

塗り絵からさらに踏み込んで、機能訓練の回復を図っているのが、塗り絵を楽しみながらリハビリテーションを行う「ぬるビリテーション」だ。対象となるのは身体機能の障害に限らず、高次脳機能障害や認知症・精神疾患など様々な症状を抱える人々。

「ぬるビリテーション」を主催するライフデザインワークス代表の志田清美氏は、特別養護老人ホームとデイサービス勤務時の8年間で、約200点以上の塗り絵を用いたリハビリテーションを展開してきた。その中で、個別や集団などのワーク形式で行った「ぬるビリテーション」は、通常の運動器の機能向上訓練だけでは得られない効果を得てきたという。

例えば、脳梗塞によって左片麻痺を発症した後1年3ヶ月が経過しても、左半側視空間無視が起こっていた施設利用者が、「ぬるビリテーション」を通して、少しずつ左側を意識できるようになり、ADL(日常生活動作)でもほぼ自立する向上が見られた。

ぼかしや濃淡の工夫が脳活性化に大きな影響

企業での独自の動きもある。三菱鉛筆株式会社では、ヒトの脳の最も発達している「前頭前野」に注目し、塗り絵で前頭前野が活性化するかどうかを東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授監修の元で検証し、自社の主力商品である鉛筆を「塗り絵セット」として2007年に発売している。(『脳芸教室~大人の塗り絵』)

その検証の結果では、単に「塗り絵」をする行為自体では必ずしも効果はないが、ぼかしや配色、色の濃淡などの工夫をする過程で脳が大きく活性化することが分かった。特に、濃淡を付ける作業は脳の活性化に非常に効果的だったという。

同社では趣味で塗り絵を楽しむ40~60歳代をターゲットに発売し、「鉛筆で濃淡」、「色鉛筆で塗り絵」、「塗り絵で絵はがき」の3つのステップでレッスンできるようなテキストブックや、書き方を簡単に学べる約30分のDVDなどをキット内容としており、完成後は、額に入れて飾るなど、絵はがきとしても知人や親しい方に送れるようになっている。

アートセラピーとしての絵画療法も広がる

「絵を描くこと」は肉体的にも精神的にもさまざまな良い影響や効果があるとし、医療機関においても積極的に取り入れているケースは存在する。心を開く、親しい気持ちになるなどの精神面でのアプローチの手段として用いられ、心理療法の技法の一つ、アートセラピー(絵画療法)としても広がっている。

欧米では1940年代以降からアートセラピーの盛んな活動や研究が報告されている。ただ、国内では絵画療法を含むアートセラピーに関する資格は民間の団体が発行している資格(民間資格)があるのみで、国家資格などの公的資格はまだ無いのが現状だ。

塗り絵をリハビリテーションに活用しよう

塗り絵の脳への効果や塗り絵を使って行われているリハビリテーションの実例について解説した。脳のさまざまな部分へ刺激を与え、活性化させることが期待できる塗り絵であれば、施設利用者に楽しさを感じてもらいながらリハビリテーションを進めることができるだろう。アートセラピーとしても注目される塗り絵に今後も注目していきたい。

公開日 :2015.10.22 更新日 :2021.07.05

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