『言語訓練用アプリ』で失語症のリハビリ効果

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2017年、言語訓練用アプリ『ActVoice for Pepper』を活用した「失語症者に対するリハビリの臨床試験」において、有意な改善が確認できたことが発表された。今回は、リハビリアプリの詳細や、それによりどのような効果が期待できるのかについて解説する。今後の失語症リハビリの可能性についてもご紹介するので、合わせてご覧いただきたい。

言語訓練用アプリと失語症のリハビリの関連性についての研究発表

2017年7月8日・9日に開催された日本コミュニケーション障害学会学術講演会にて、村西幸代氏(君津中央病院言語聴覚士)は、言語訓練用アプリ『ActVoice for Pepper』を活用した「失語症者に対するリハビリの臨床試験」において、有意な改善が確認できたことを発表した。 同アプリは、Pepperアプリ開発・運用、医療用タブレットアプリ開発を手掛ける株式会社ロボキュア(本社:東京都中央区、森本暁彦社長)と千葉大学との共同研究によって開発されたものである。 (発表は、君津中央病院の協力によって2015年12月より約1年半にわたり実施されたリハビリの結果に基づく。)

国内の患者数は約50万人!失語症とは?

失語症は、コミュニケーション障害のひとつで、脳の言語中枢が傷つくことで生じる。話す、聞いて理解する、読んで理解する、書くなど言語に関わるすべての作業が難しくなる障害だ。 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中や、頭部外傷、脳腫瘍などで損傷を受けることで起こり、発症は40~50代に多く見られ、国内患者数は約50万人いるといわれている。 失語症のタイプは人様々なため、リハビリについては言語聴覚士に相談をして勧めていくことが大切だ。

失語症用リハビリアプリ『ActVoice for Pepper』を使用した臨床試験

失語症用のリハビリアプリ『ActVoice for Pepper』および、2017年に発表された同アプリを使用した臨床試験について、詳しく紹介していく。

失語症用リハビリアプリ『ActVoice for Pepper』

『ActVoice for Pepper』では、絵を見て、その絵が何かを回答する訓練を行う。症状によってコースを選ぶことができ、Pepperの胸部タブレットに表示された絵について発話で回答する形だ。語頭音のみのヒントを出したり、難易度によってより明瞭な発話が求められたりと、様々な工夫がなされている。

リハビリを行う言語聴覚士が不足している現状をもとに、無人でリハビリを行えるこのようなシステムが作られた。人型ロボットPepperを使うことで、楽しく効率的にリハビリを行うことができる。

アプリによる失語症リハビリの臨床試験方法

対象者 45歳~76歳の軽~重度の慢性期運動性失語 4名
方法 ・Pepperを使って呼称訓練を実施
・訓練期と訓練休止期を1ヶ月ごとに2回ずつ
臨床試験では、軽~重度の慢性期運動性失語4名(45歳~76歳)を対象に、Pepperを使用した呼称訓練を実施。訓練期と訓練休止期を1ヶ月ずつ×2回行った。

Pepper胸部のタッチディスプレイに絵を提示して、「これは何ですか?」と呼称を促し、Pepperが正答には「正解です」、誤答には「〇〇と聴こえました」、認識困難には「良く聴き取れませんでした」と応答する。

アプリによる失語症リハビリの効果

病院内の訓練では、4症例中3症例で訓練後の正答率の改善がみられ、自宅での長期訓練(病院内の訓練で改善の度合いが少なかった1症例)でも改善が確認できたという。

病院内での訓練で有意な改善が認められなかった1例では、自宅で訓練(週に4~5回1回あたり20分程度)を継続した結果、改善が確認できた。

村西氏によると、長期的な見通しでの粘り強い練習が必要となる言語訓練だが、ロボットに対しては気負わずに、自分の苦手とすることを練習できることが最大のメリットだとしている。

また、失語症者とロボット間で1:1の言語訓練がきちんと成り立ち、さらに失語症者の呼称の回数が増えるなどのメリットがみられたという。

PC用アプリ「リハログ」で退院後の言語訓練も管理

また同社は、PC用アプリ「リハログ」も提供している。言語聴覚士が遠隔で使用することで、自宅でのPepperを使用したリハビリ状況を正確に確認することができ、訓練内容の調整も可能となる。『ActVoice for Pepper』と「リハログ」を連携させて使用していくことで、退院後も効率的なリハビリが可能となるだろう。人手不足の言語聴覚士が、長時間のリハビリに付き添うことが難しい状況下を解決する糸口になることが期待される。

今後ロボットによるリハビリメニューをより一層拡充

今回の訓練結果から同社では、「飽きやロボットに対する抵抗などはなく、継続的な訓練を実施できた。」、「(一般的に大幅な改善は困難とされる)発症後6ヶ月以上経過した慢性期の失語症者(今回の訓練対象者は発症後3~8年経過)に改善がみられた。」、「効果を持続させるためには継続的な訓練が必要(一度改善しても訓練をやめると正答率が低下)」などと考察している。

国では、「2025年問題」に向けて医療・介護領域におけるICT技術の活用を重要施策の1つとしており、同社では今後、ロボットでの実施に適した訓練メニューを拡充していくことで、人とロボットの協働によるリハビリの実現を図るとしている。


【出典】
1、https://robotstart.info/2017/11/06/robocure-kimitsu.html
参考リンク
ロボキュア、臨床試験でロボットによる失語症者向け言語リハビリの有効性を確認 時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/article?k=000000004.000023746&g=prt
Pepperによる失語症者向け言語リハビリは有効なのか、君津中央病院での臨床試験結果をロボキュアが発表 ロボスタ
https://robotstart.info/2017/07/11/robocure-pepper.html

公開日 :2017.08.30 更新日 :2021.10.06

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