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2016年、熊本地震で改めて示された言語聴覚士の役割に焦点を当てたい。
被災地には必ず高齢者がいる。全国的に高齢化が進み、2025年に向けて爆発的に後期高齢者の人口比率が高くなっている現状では、被災地にこそ寝たきり予防の早急な対応が必要だ。
4月14日に前震が起こり、4月16日に本震、さらに立て続けに震度6強の余震が発生した。この災害に際しては日本各地から災害派遣DMATチームがすぐさま派遣されたが、このためらいのない対応が東日本大震災の被害の上に構築されたものであると考えると、多くの医療従事者が複雑な境地に陥ることだろう。
前例のない広範囲、かつ深刻な被害だった東日本大震災は多くの課題を残したが、今回の熊本地震ではその教訓が生かされた面が確かにあった反面、いまだに不十分であると確認された領域も見られた。
言語聴覚士として注目すべきは、地震発生から5日目、19日に活動を開始した熊本市の口腔ケアチームだろう。
チームの人員は歯科医師、歯科衛生士、看護師、栄養士、言語聴覚士で編成された。彼らは2チームの構成で熊本市内の避難所を巡回し、健康・衛生管理に努めたという。
この活動には、確実に東日本大震災の経験が生かされている。
もともと介護を受けていた高齢者も多く避難しており、他の健常者と同様の扱いを受けた結果状態が悪化したケースがあった。十分なケアを受けられなかったために「食べる」「しゃべる」といった機能が減退し、意欲低下や肺炎、寝たきりに結びついた例も多いと考えられる。
それでもすぐに医療機関に搬送できれば対応も可能だろう。しかし、被災地ではそうは行かない。
被災時点で残されていた高齢者の身体機能をいかに守るか、その観点から見れば、持続的な口のリハビリは非常に有意義なのだ。口腔ケアチームの一員として、言語聴覚士は命を守る役割を担うことになる。
熊本地震を受けて真っ先に医療班を派遣したのは熊本病院だ。
それぞれ機能を特化させた「感染対策班」「深部静脈血栓症対策班」「歯科口腔指導班」「小児医療班」「産科医療班」「看護班」、そして「口腔ケアチーム」があった。
大規模な地震災害では、前震、本震、余震そのものの被害も怖いが、地震関連死はより深刻に影響を残す。
被災地で医療機能を維持するには、即座に医療機関に情報を集め、人員を集め、派遣しなければならない。現場レベルでの情報収集および共有、集約が不可欠だと考える。
言語聴覚士が普段から関わる医療従事者は限られているかもしれないが、日ごろから視野を広く持ち、医療機関、医師、看護師、栄養士らとのつながりを深めておいてほしい。地震災害はいつ起こるとも知れない。何事もない平常時の努力こそが、非常時の助けになるはずだ。
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