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言語聴覚士の仕事は、職業の名称から連想される発声などに関する物だけではない。
食べる機能の障害についても、そのサポートの範囲内である。
音声、言語、聴覚、そして食べる機能に問題が起こるのは、先天的な疾患が理由となることも多いが、脳卒中などがきっかけとなるケースが多い。
脳卒中後の患者の場合、食べる機能に障害が現れると「嚥下障害」と言って、肺炎を起こしやすい状態になってしまう。
言語聴覚士は肺炎そのものの処置はできないが、もしもその患者が在宅療養の環境にある場合、患者家族へのアドバイスを的確に提供するためにもポイントを押さえておく必要があるのではないか。
通常とは異なる対応が必要となる「脳卒中後の肺炎」について紹介する。
脳卒中後の肺炎は抗生物質で予防できないという。
抗菌薬を使用した誤嚥性肺炎の予防ケアの有効性を検証する臨床試験が行われた。
対象となった患者は2008年から2014年の間に入院加療を受けた脳卒中患者1224人。
これを、抗菌薬を使用した予防ケアを行うグループ、行わないグループに分けて経過を観察した。
その結果、脳卒中後の誤嚥性肺炎に対して「抗菌薬による予防ケアは有効と言えない」と判明したのだ。
予防ケアの常識は過去のものになった。では、現在脳卒中患者のケアに当たっている医療従事者や介護者はどうすればいいのか。
日本の統計データを読むと、2011年以降日本人の死亡原因の3位が肺炎、4位が脳血管障害だ。もちろん肺炎の原因がすべて誤嚥とは限らない。しかし脳血管障害後の誤嚥性肺炎の発生件数が減っているとはだれも言えないだろう。
死亡原因2位に上っている心疾患もまた、血流障害などで脳血管障害へとつながっている。
病後、障害を抱えるようになったとしても患者の人生は続いていく。
生活を送る上で食事は避けようがなく、誤嚥の危険性を認識して上手に付き合っていくしかない。
これまでの通例通りに抗菌薬を処方したところで誤嚥性肺炎は予防できないと判明した。過去のものとなった「常識」から脱却して新たな取り組みを始める時が来たと考えるべきだろう。
先進的な医療技術については、研究室で地道に研究に取り組む科学者の担う役割が大きい。しかし、現場で患者と直接向き合うケアに関しては現場の声が必ず必要になる。
日常的に患者や患者家族に触れ、状態を観察し続けている言語聴覚士もまた、脳卒中後の患者に対する誤嚥性肺炎予防ケアの未来を担う重要な役者なのだ。
今まさに患者の危機に立ち会っている療法士にとっては不安な期間になるかもしれないが、自分もまた新しい予防ケアを生み出すために必要な人材の一員なのだと自覚して、患者のケアに努めて行ってほしい。
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