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健康な骨では、骨吸収と骨形成とのバランスがとられて骨量が維持されている。しかし、骨粗しょう症ではそのバランスが壊れ、破骨細胞による骨吸収が亢進して骨量が減少する。
破骨細胞による骨吸収において、破骨細胞から放出される「プロトン」が酸性微小環境を作成し、無機質(骨組織の65%を占める)が酸によって溶解することで骨が脱灰されることが分かっている。
一方で、骨組織に最も多く存在する有機質はコラーゲン線維だが、破骨細胞から分泌され酸性条件下で活性化した「カテプシンK」がコラーゲン線維を分解する働きを持っている。
また、コラーゲン線維に次いで、骨に多く含まれる有機質である「プロテオグリカン」では、枝分れのない長鎖多糖で、2糖の繰り返し構造からなる『グリコサミノグリカン(GAG)』がプロテオグリカンの糖鎖として存在している。
弘前大学は10月26日、多田羅洋太氏(同大大学院医学研究科助教)、須藤晋一郎氏(同助手)、伊東健氏(同教授)らの研究グループが、酸性条件下で「硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)」がコラーゲン線維に結合することで、『耐酸性コラーゲン線維』が形成されることを初めて発見したと発表した。
同研究成果は、「Glycobiology」(Advance articles)で公開されている。
プロテオグリカンの糖鎖として存在する『グリコサミノグリカン(GAG)』は、多数の硫酸基とカルボキシ基を持っており、強く負に帯電する特徴があることが分かっている。
代表的なGAGでは、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸、ヘパリンなどが上げられる。
このGAGとコラーゲンは、ともに骨の主要な成分であるにも関わらず、両者の関係についてはあまり注目されてこなかった。
今回、同研究グループでは、通常、酸性pH下に置いた場合のコラーゲン線維では、変性して可溶化するが、GAG存在下にあるコラーゲン線維は、変性せずに線維構造を保っている(耐酸性コラーゲン線維)ことを発見。
さらに、この耐酸性コラーゲン線維では、「pH4」では分解を受けなかったが、「pH5」ではGAGがコラーゲン線維に結合したままコラーゲン分解が促進することが判明したという。
今回の研究結果によって、酸性条件下でGAGがコラーゲンと結合することが示されたため、GAGがコラーゲン線維の分解を調節している可能性が示された。
今後は、コラーゲン線維分解においてGAGが担っている役割を明らかにして、骨吸収におけるコラーゲン線維の分解メカニズムの解明することが期待される。
また、それによるGAGの機能をターゲットとした新しい骨粗しょう症治療薬の開発につながることも期待される。
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