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岡山大学は7月18日、加藤百合氏(同大自然生命科学研究支援センター特任助教)ら、松本歯科大学、久留米大学、東北大学、九州大学、東京農業大学、味の素株式会社の共同研究グループによって、骨粗鬆症治療薬「クロドロン酸」が小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)を阻害することで神経因性疼痛や炎症性疼痛、慢性炎症を改善できることが明らかになったと発表した。
同研究成果は、世界初の発見であり、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」(電子版)に掲載されている。
世界中で利用されている骨粗鬆症治療薬のひとつ「ビスホスホネート製剤」は、臨床報告によって、骨疾患を発症した患者に対して複数の鎮痛効果があることが分かっている。
すでに第一~第三世代まで開発されている同剤は、「第一世代」では骨粗鬆症治療効果が弱い一方で、副作用が少ない傾向がある。しかし、「第二・三世代」では骨粗鬆症治療効果は強いものの、副作用問題があるという特徴があった。
先行研究(東北大学の研究グループによる)の結果では、副作用が少ない「第一世代」の同剤には鎮痛効果があることが示されていたが、その作用メカニズムは明らかになっていなかった。
今回、研究グループは、疼痛の原因となる神経伝達を遮断することを目的として、神経伝達の起点になっている伝達物質の分泌機構に着目した。そこで、この分泌に必須となる小胞型神経伝達物質トランスポーターを第一世代のビスホスホネート製剤が阻害するかを検証した。
その結果、「クロドロン酸」(第一世代のビスホスホネート製剤)が、VNUTを選択的かつ可逆的に極めて低濃度で阻害することで、アデノシン三リン酸(ATP)の神経細胞からの放出を遮断していることを発見。
その鎮痛効果は、神経因性疼痛の第一選択薬「プレガバリン」よりも有効であるなど、従来の鎮痛薬として臨床利用されている医薬品よりも効果が高いことも判明した。また、プレガバリンの副作用として上がる眠気などはクロドロン酸投与群では見られなかったという。
「クロドロン酸」は、免疫細胞からのATP分泌を遮断していることで、抗炎症効果を発揮(炎症性疾患の原因である炎症性サイトカイン量を低減)していることも明らかになり、これは抗炎症薬「非ステロイド性抗炎症薬」(NSAID、商品名:ボルタレン)よりも強力で、一般的なステロイド製剤(商品名:プレドニン)と同等の抗炎症効果が示されたという。
欧米では「クロドロン酸」が骨粗鬆症治療薬として承認されている。そのため、ヒトに対する安全性という点では実証されており、同研究グループでは今後、初の『トランスポーター標的型鎮痛薬・抗炎症薬』になることが期待されるとしている。
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