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今年2月に放映されたNHK番組「ガッテン!」で、睡眠薬「ベルソムラ」の適応外処方を推奨するかのような内容が放映され、波紋が広がっている。
問題となったのは、2017年2月22日放送のNHK情報番組「ガッテン!」内での『最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎』で、睡眠薬で糖尿病の治療ができるかのような特集内容だった。
同日の放送では、「熟睡をもたらす脳波」としてデルタ波を取り上げていた。『デルタパワー』(デルタ波を定量化したもの)が熟睡度を左右し、このデルタパワーの数値が高いと血糖値を下げられる(血糖降下作用がある)とも紹介。
さらに、睡眠薬(不眠症治療薬)である「ベルソムラ(一般名:スボレキサント)」の商品名が入ったパッケージを放映し、ベルソムラの服用によってデルタパワーを高めて熟睡時間を増やすことで、糖尿病患者に血糖低下効果がみられ、副作用もほとんどないとした。(大阪市立大学の検証研究として紹介)(ベルソムラには糖尿病治療薬(「血糖降下作用がある」など)としての承認適応はない)
7月8・9日に慶應義塾大学薬学部芝共立キャンパスで開催された第20回日本医薬品情報学会総会・学術集会では、集会初日に鈴木陽代氏(東京大学大学院薬学系研究科育薬学講座)が「NHK健康情報番組が医療現場に及ぼした影響に関する実態調査」として、医療従事者へのアンケート集計の結果を発表した。
医師向けインターネット医薬品情報提供サイト「医師のための薬の時間」(通称:アイメディス)、インターネットの薬剤師間情報交換・研修システム「薬剤師さん!頑張ろう!」(通称:アイフィス)を通じて、番組放送2週間後(3月7~22日)にアンケートを実施(合計189人(医師37人、薬剤師152人)が回答)した結果、「番組を見た患者が医師に処方変更を求める」ケースや、「(処方変更の)要望に応えてもらえなかった患者の精神状態が不安定になる」などが起きていたことが明らかになった
番組の影響を受けた患者の具体的な行動では、神経症・糖尿病を合併していた患者が処方希望を断られたことが原因で不満を抱えて精神状態が不安定になり、抗うつ薬(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI))が処方された、糖尿病患者(睡眠障害なし)が医師にベルソムラ処方を依頼(薬剤師の疑義照会によってベルソムラ処方は中止、糖尿病治療薬の変更で経過観察へ)などがあったという。
同アンケート結果では、医療現場への影響も大きく対応に苦慮するケースや、全体的に否定的な意見が多くなり、医師は「このような情報(適応外)は提供しない方がよい」(62%)、「患者の薬に対する意識に悪影響を及ぼす」(49%)、「医師としては迷惑であり、ある種の診療妨害である」(43%)の順に多く、薬剤師は「患者の薬に対する意識に悪影響を及ぼす」(61%)、「このような情報(適応外)は提供しない方がよい」(59%)、「医療従事者に迷惑であり、ある種の診療妨害である」(35%)の順になった。(薬剤師では、「患者と薬剤師のコミュニケーションのきっかけになる」も27%にのぼった。)
今回の放送に対して、日本睡眠学会と日本神経精神薬理学会がNHKに対して異議を申し立て、厚生労働省も口頭による厳重注意を行った。
NHKでは2月27日になって、番組HP上に「行き過ぎた表現で誤解を与えた」として謝罪し、28日に予定していた再放送を取り止めている。
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