視能訓練士とは？なるには国家試験に合格！合格率と仕事内容＆年収を紹介

視能訓練士とは、国家資格を持った医療従事者であり、視機能のスペシャリストです。この記事では、視能訓練士になるための方法と仕事内容、給料、将来性など、視能訓練士を目指す方に役立つ情報を記載しています。

視能訓練士とは

視能訓練士は、視能訓練士法に基づく国家資格を持った医療従事者です。視能訓練士は、英語でCertified Orthoptistと表記され、通称COとも呼ばれます。斜視や弱視など視界機能に障害を持つ方に対して検査や矯正を行う、視機能のスペシャリストとも言えます。

視能訓練士法によると下記のように定義されています。

この法律で「視能訓練士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、視能訓練士の名称を用いて、医師の指示の下に、両眼視機能に障害のある者に対するその両眼視機能の回復のための矯正訓練及びこれに必要な検査を行なうことを業とする者をいう。

出典；厚生労働省「視能訓練士法」

視能訓練士になるには

視能訓練士になるには、年に1回実施される国家試験を受験し、合格する必要があります。国家試験の受験資格を得るためには、以下の指定施設のいずれかを卒業しなければなりません。

・高校卒業後、視能訓練士養成所（3年以上） ・短大、大学、専門学校、保育士養成学校、看護学校のいずれかを卒業後、視能訓練士養成所（1年以上） ・視能訓練関連の課程がある大学 ・外国の視能訓練士の学校

夜間部を開校している機関もありますので、社会人であっても比較的取得を目指しやすい医療系の国家資格ともいえます。

国家試験の概要

試験日	毎年2月
試験会場	・東京都 ・大阪府
試験科目	・基礎医学大要 ・基礎視能矯正学 ・視能検査学 ・視能障害学及び視能訓練学
受験手数料	15,800円
問題数	午前75問 午後75問
解答方法	マークシート（5択）
合格点	正答率6割以上

視能訓練士の国家試験は、毎年2月に東京都・大阪府で行われています。ただし、年度により会場や問題形式、申込時期などの詳細が異なる可能性があるため、受験を検討している方は、必ず厚生労働省のホームページにて最新情報を確認してください。

国家試験の合格率

厚生労働省発表の視能訓練士の合格率は、下記のとおりです。

開催年	2024年	2023年	2022年	2021年	2020年
合格率	95.2%	89.3％	91.8％	91.1％	96.1％

視能訓練士の国家試験は、一般問題１問１点（129点満点）、臨床問題１問２点（40点満点）です。正答率6割以上で合格となり、合格率は毎年9割前後あります。試験対策の勉強をしっかりと行った場合、合格する可能性が高いです。

視能訓練士の仕事内容

視能訓練士の仕事内容は、大きく分けると「視能矯正」「視能検査」「検診業務」「ロービジョンケア」の4つです。各仕事内容について、わかりやすく解説します。

視能矯正

弱視や斜視など、視覚機能に障害を持つ方に対し「見る」機能の回復、正常な両眼視機能の獲得を目的とした訓練を行います。例えば片目ずつ隠し、斜視があるかどうかを判断する「斜視（眼位）検査」も、視能訓練士の仕事のひとつです。医師の指示のもと、小児に対して検査や弱視訓練などを行うこともあります。視機能が発達する期間には限りがあるため、早期発見が重要です。

なお、視能矯正の対象は、小児だけではありません。高齢者に対し適切な拡大鏡などの補助具を選び、使い方を指導することも大切な仕事です。

視能検査

人の眼はとても複雑かつ繊細な器官です。視能訓練士は、視力検査や屈折検査、コンタクトレンズ検査、メガネ処方検査などの眼科一般検査のほか、以下の特殊な検査も担当します。

・眼の組織の断層撮影を行う画像診断検査 ・角膜形状検査 ・超音波検査 ・電気生理検査など

データ提供を通じて、医師をサポートすることも視能訓練士の役目です。必要なデータを適切に提供することで、眼科医療の一翼を担っているといえます。

検診業務

視能訓練士が働く場所は、病院だけではありません。検診業務の場合、保健センター、保健所、学校などに出向くケースが多いです。例えば、3歳児健康診査における視覚検査、就学時健康診断など、幼児や児童の成長におけるタイミングでの視覚検査も行います。

特に幼児や児童の眼疾患は、早期発見・早期治療が重要とされているため、集団検診において視能訓練士が果たす役割は大きいです。また、成人の職場検診、生活習慣病予防健診などにも参加し、眼疾患の早期発見を目指します。

ロービジョンケア

ロービジョンケアとは、視覚に障害があることで、生活に何らかの支障を感じている方に対するすべての支援の総称です。視能訓練士は、眼疾患や外傷により視機能が低下した方に対し、遮光レンズやルーペをはじめとした一人ひとりに合わせた視覚補助具の選定、支援機関の紹介、視覚リハビリテーション施設との連携、日常生活の工夫に関するアドバイスなど、さまざまな形で生活の質（QOL）改善を支援します。

視能訓練士の年収

2023年時点の視能訓練士の年収は以下のとおりです。

月給	賞与	年収
30.09万円	71.44万円	432.52万円

(※1)なお、上記のデータには理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も含まれています。参考として、ご確認ください。日本人の平均年収は約458万円
(※2)のため、視能訓練士の年収は、平均とほぼ同等または少し低い程度です。

※1 出典 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
※2 出典：国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」）

視能訓練士の将来性

視能訓練士は、将来性のある仕事です。近年のA Iの普及により、今後需要が減る仕事に対する話題が尽きませんが、視能訓練士の仕事は、コミュニケーションが重要視されます。患者への直接的なサポートやイレギュラーな対応が求められるため、完全に機械にとって代わる仕事ではありません。

視能訓練士は医師の指示のもと、検査や矯正などを行います。今後、難易度の高い手術や新しい治療法の開発などがさらに進めば、より視能訓練士の価値は高まるでしょう。現在、眼科医1人に対し、視能訓練士は2～3人必要だと言われています。

しかし、2020年時点で眼科医13,639人（※3）に対し、視能訓練士の数は10,130人（※4）です。すでに人手不足の状態ですが、レーシック治療やICL治療などの医療技術の発展に伴い、今後さらに視能訓練士の需要は高まると言えます。

※3 出典：厚生労働省「令和2（2020）年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
※4 出典：厚生労働省「令和5年版厚生労働省白書2 保健医療」

視能訓練士に関するよくある質問

視能訓練士の仕事に興味を持った方向けに、やめとけと言われる理由や難易度、就職のしやすさなどよくある質問と回答をまとめました。

視能訓練士はやめとけって本当？

ネット上で「視能訓練士はやめとけ」といった発言を見かける理由は下記のとおりです。

・一般的な認知度が低い ・女性比率が高い ・離職率が高い

2020年調査、公益社団法人日本視能訓練士協会の視能訓練士の転職状況（※5）によりますと、6割以上の視能訓練士が1回以上の転職を経験しています。2015年と比較すると、特に男性の転職回数が急増しており、女性比率の高さと合わせて「男性にとって働きにくい職場」というイメージから、「やめとけ」と言われている可能性があるでしょう。

しかし、転職理由の男性トップは「キャリアアップ」34.6％、女性トップは「結婚や出産を機に」38.1％と、どちらもネガティブな理由でないことがわかります。「やめとけ」という声は確かに存在するものの、将来性があり、キャリアアップを狙ったり、ライフスタイルの変化に伴って働き方を変えたりできる仕事です。

※5 出典：2020年公益社団法人日本視能訓練士協会「視能訓練士実態調査報告書 図II-13-1」

視能訓練士は難易度が高い？

視能訓練士は、国家資格です。前述したように視能訓練士養成所や視能訓練関連の課程がある大学に通う必要があります。受験資格を得る方法が限られている点から考えると、難易度は高めです。

一方で国家試験の合格率は約9割のため、試験の難易度は低いと言えます。2024年を例に挙げると、全体の合格率95.2％、うち新卒者は97.8％です。効率的な試験対策を行うことで、合格は十分に可能と言えます。

視能訓練士は就職できない？

視能訓練士は、就職できる可能性が高いです。ただし、視能訓練士は名称独占資格であり、資格を名乗る権利があるものの、業務自体は看護師や准看護師も従事できます。そのため、クリニックや病院では、視能訓練士の求人がないケースも少なくありません。

また地方よりも都市部に求人が集中する傾向があり、お住まいの場所によっては競争率が高いと感じる可能性があります。

視能訓練士は将来性の高い職種です

視能訓練士は、視機能のスペシャリストであり、医師からも信頼される存在です。しかし、現時点で医師の数と比較し、必要な視能訓練士の数は足りていません。将来的な医療技術の発展に伴い、視能訓練士のニーズはさらに高まると考えられます。
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