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緑内障などの視神経疾患の病態解明・薬剤効果の判定などの薬物研究には、研究用の視神経細胞(網膜神経節細胞)が必要にある。しかし、視神経は中枢神経であるため、ヒトでは採取できない。
そのため、これまでマウスなどの動物の網膜から摂取した視神経細胞の培養による動物モデル(in vivo実験)が使用されてきたものの、薬物に対する反応はしばしばヒトとは異なるため、ヒトに有効な薬物開発は円滑に行えなかった。
また、ES細胞・iPS細胞などの多能性幹細胞の研究が進められている再生医療の分野でも、ES細胞・iPS細胞から網膜(・その一部分である視細胞)を作る研究は行われてきたが、視神経細胞を作ることは、非常に困難とされてきた。
国立成育医療研究センターは11月29日、東範行氏(同センター病院眼科医長(研究所 視覚科学研究室長))の研究チームが、ヒトES細胞から視神経細胞を作製することに成功し、視神経細胞を用いて薬物の効果を判定する技術を世界で初めて開発したと発表した。
同研究成果は、「Scientific Reports」で発表されている。
眼と脳をつないで、眼の網膜に映った視覚情報を脳へ伝達する「視神経」。この「視神経」は、網膜にある『細胞体(網膜神経節細胞)』から伸びる軸索(長い神経線維)によって構成されており、視神経管を経由して脳に達している。
様々な疾患(視神経炎や遺伝性視神経障害、虚血、外傷など)から視神経が障害されると、重篤な視力障害が起こるが、これらの視神経疾患では、軸索が主に障害される。
また、国内における失明原因の第1位(約25%)を占める緑内障は、40歳以上の日本人の5%が罹患し、治療中の患者数約30万人、潜在患者数は400万人と非常に多い。
一方で、これまでの視神経疾患の研究においては、研究に必要となる長い軸索をもつ網膜神経節細胞を得ることは不可能だった。
同研究チームでは、2015年に『ヒトiPS細胞』から、2016年には『マウスiPS細胞・ES細胞』から、培養皿の中で機能する軸索をもつ網膜神経節細胞の作製に世界初の成功。
そして今回は、『ヒトES細胞』からも同様に、網膜神経節細胞の作製に成功。同研究チームの視神経細胞作製法は、多能性幹細胞の種類を問わず、普遍的な技術であることが確認されたとしている。
さらに、ヒト iPS細胞・ES細胞から作製した視神経細胞によって、神経栄養因子や神経抑制因子の効果を判定する技術も、世界で初めて開発。
同研究チームは、今回の研究成果から、今後、ヒト細胞を用いた神経系の薬物評価が可能になることで、失明につながる視神経疾患に対する『創薬への道のり』の大幅な短縮も期待できるとしている。
また、患者の細胞由来のiPS細胞を用いることで、疾患の特徴を持った「視神経細胞モデル」の作製を行えるため、それに対する効果のある薬剤の開発も可能になるとしている。
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