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サウスウエスト網膜財団(米テキサス州)などの研究チームでは、網膜の異常によって著しく視力が低下してしまった人や失明している患者の目に緑藻類の「コナミドリムシ」の遺伝子を注入することで、視覚の回復を行う治療の臨床試験を近く実施することが分かった。 同研究チームによると、この緑藻類の遺伝子による視力回復治療の臨床試験(治験)は世界初になるという。
緑藻類(りょくそうるい)は緑色の光合成色素を持つ藻類で、側溝にいるアオミドロや海藻のアオサなどが該当する。
緑藻類の遺伝子は、光に反応することで神経細胞の活動を活発にするタンパク質を生成する性質があることが分かっている。
緑藻類の遺伝子による視力回復の研究に関しては、これまで動物実験による研究は進んでおり、国内では2008年に東北大先進医工学研究機構の研究グループが網膜色素変性症で失明したラットの網膜に緑藻の遺伝子を注入して視力を回復させる実験を成功させている。
この実験では、水田など淡水域の湿地にすむ「クラミドモナス」の遺伝子が使用された。
このラット実験では緑藻類の遺伝子を注射した6週間後にはラットの視力回復が確認され、注入後1年以上は効果が続くことも認められたため、ヒトの網膜色素変性症や加齢性黄斑変性症の治療への応用が期待されていた。
今回、サウスウエスト網膜財団などの研究チームは、網膜色素変性症の患者が対象にして緑藻の一種「コナミドリムシ」の遺伝子を目に注射し、最大15人に臨床試験を実施する予定。
網膜色素変性症では、網膜の最深部の光を感じる視細胞が変性することで、視力低下などを招く。
網膜色素変性症や加齢黄斑変性症での失明は、光を受け取る視細胞が損なわれるが、脳に情報を伝える神経節細胞は正常な状態のままであるため、網膜の細胞の代わりに、緑藻類の遺伝子が生成するタンパク質が光を受け取る機能を果たすことで、脳には情報が伝わり、何らかのものが見えるようになる仕組みだ。
網膜に遺伝子を注射する方法であれば大掛かりな手術は要らず、治療時間をあまりかけなくてよいというメリットがあり、安全性の検証が課題になっている。
また、緑藻の遺伝子が感知するのは青色の光のみで、緑藻遺伝子で回復した目には青い光が作る像が白黒で見えるという。
当時の研究メンバーとしてラット実験による研究に関わった冨田浩史岩手大教授(視覚神経科学)は「単に光が見えるようになるだけではなく、ある程度ものの形が見えるようになる」と話す。
最短2週間ほどで何らかの像が見え、2ヶ月程度で形が分かるまで改善すると期待される。
国内における網膜色素変性症の治療としては、視細胞を人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作る研究も進められている。
(視能訓練士コラム :ES・iPS細胞由来の視細胞で網膜色素変性の治療確立へ、理研も参照)
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