脳出血の超急性期での降圧療法で血腫抑制も、心・腎有害事象は増加

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国立循環器病研究センターは11月28日、豊田一則氏(国循副院長)、古賀政利氏(国循脳血管内科部長)、山本晴子氏(国循臨床試験推進センター長)らの研究チームと海外研究者は共同で、急性期脳出血症例に対する降圧療法の効果を検証する臨床試験に基づくサブ解析研究の結果を発表した。

※「Antihypertensive Treatment of Acute Cerebral Hemorrhage (ATACH)-2試験」

同研究成果は、米国神経学会機関誌「Annals of Neurology」(電子版)に掲載されている。

脳出血急性期の積極的な降圧療法の科学的エビデンスは不十分

過去の研究で報告された脳出血急性期における積極的な降圧療法のエビデンスとして、研究者主導の国際試験である「ATACH-2試験(2016年に「New England Journal of Medicine」に掲載)」の解析結果からは、積極的な降圧療法を行ったグループと通常の降圧療法を行ったグループの死亡または高度機能障害の発生率は、どちらも「38%」程度となっている。

これは、脳出血急性期に対する「積極的降圧による転帰改善効果」を認めるものではなく、その科学的エビデンスはまだ十分といえない

「ATACH-2試験」からのサブ解析を実施

国循の研究チームは、国内13施設の協力を得て、米国、中国、台湾、韓国、ドイツの研究者らとともに「ATACH-2試験」に参加。

今回のサブ解析では、「ATACH-2試験」で降圧療法後の24時間に測定された「到達収縮期血圧値(収縮期血圧レベルの平均値)」と、「死亡・高度機能障害(3か月後)」や「早期血腫拡大(変化量6mL超)」、「心血管系および腎臓系の有害事象(非軽症、7日以内)」との関連を検証した。

「ATACH-2試験」に登録された1,000例(うち日本人288例)の「到達収縮期血圧値(中央値で129.8mmHg)」によって、5つのグループに分けて、解析を行った。

「死亡・高度障害」と到達収縮期血圧値との関連は不明瞭

検証結果からは、「死亡・高度障害」は、到達収縮期血圧値が「140~150 mmHg」のグループで有意に高率を示した(オッズ比1.62、95%信頼区間1.02-2.58)。

しかし、「死亡・高度障害」は全体的に血圧との関連は不明瞭だった。

また、「血腫拡大」は血圧レベルと正の相関関係を認め、とくに「140 mmHg以上」の2つのグループで有意に高率に認めた

一方で、「心・腎有害事象」は血圧レベルと負の相関関係を認め、とくに「140 mmHg以上」の2つのグループで有意に低い割合となった

急性期脳出血治療法の解明に期待

今回のサブ解析の結果により、出血超急性期に急激に血圧を下げることは、後遺症につながる「血腫の拡大」は抑制する一方で、血圧が低くなると「心・腎有害事象」が増加するため、全体として「死亡・高度障害」は減らせない可能性が示された

脳出血急性期治療を行う際には、降圧に伴う全身循環の変化に十分に配慮する必要性がある。

  なお、「ATACH-2試験」からは、他にも多くのサブグループ解析が計画され、国循の研究チームもその幾つかを担当している。

同研究チームでは、今後の更なる解析結果を重ねて、有効な急性期脳出血治療法を解明することが期待されるとしている。

公開日 :2019.01.30 更新日 :2021.10.06

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