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近年、「C型肝炎」の治療は劇的に進歩しており、これまで使用されてきたインターフェロンを使用することなく、『直接作用型抗ウイルス薬』を組み合わることにより、ほぼ100%のウイルスを排除できるようになっている。
しかし、肝硬変に至った患者では、ウイルスを駆除しても傷つけられた肝臓を完全に修復することは困難である。
一方で、「腸」は血液の循環経路から肝臓とつながりが深く、非代償性肝硬変の患者において、高アンモニア血症の予防・治療のため、抗生剤を用いた腸内フローラの改善が試みられてきた。
名古屋市立大学は5月1日、田中靖人氏(同大大学院医学研究科教授)、井上貴子氏(同講師)らと、中山二郎氏(九州大学大学院農学研究院准教授)、奈良県立医科大学、愛知医科大学との共同研究によって、C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染が腸内フローラを変化させ、病状が悪化するにつれて腸内フローラの破綻(dysbiosis)が進むことを世界で初めて証明したことを発表した。
同研究成果は、米科学雑誌「Clinical Infectious Diseases」電子版で公開された。
今回、研究グループは、健常者(23名)、病期の異なるC型肝炎患者(166名※)の便検体・臨床情報を収集し、次世代シーケンサーを用いた腸内フローラの特徴の解析を実施。
(※全体数166名、その内、肝機能正常HCVキャリア(PNALT)18名、慢性肝炎84名、肝硬変40名、肝がん24名)
解析の結果から、PNALTの患者においても、すでに腸内フローラに変化が現われており、一時的にバクテロイデス属・腸内細菌科などの細菌が増加していることを確認。
さらに、PNALT、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと病期が進行するにつれて、腸内フローラを構成する菌種が減少(単純化)し、レンサ球菌属のストレプトコッカス・サリバリウスなどが腸管内に増加することで、腸内フローラの破綻が見られることを証明した。
この腸管内で増加しているレンサ球菌属の細菌は、尿素を加水分解してアンモニアと二酸化炭素を作り出す酵素のウレアーゼ遺伝子を持っていることが判明。
実際に、便の水素イオン指数(pH)の測定を行った結果、C型肝炎の病期が進むにつれて、便のpHは上昇し、アルカリ性に傾いていることが明らかになり、便中アンモニアの増加が予測された。
C型肝炎の病期進行につれて腸内フローラは破綻し、腸管内で異常に増殖した細菌がアンモニアの増加を引き起こしている可能性かあることや、ストレプトコッカス・サリバリウスなどのアンモニア生産菌が病期の進行に関与している可能性も示唆された。
これは、腸管から吸収されたアンモニアが血液中に増加すると、高アンモニア血症・肝性脳症などの原因となるためだ。
これまでにC型肝炎病初期(PNALTや慢性肝炎)の腸内フローラに関する報告はなく、また今回の研究のように腸内フローラの変化を病期別に解析した研究もなかった。
今回の成果について、同研究グループでは、「ストレプトコッカス・サリバリウスなどのアンモニア生産菌を抑え込むことが高アンモニア血症・肝性脳症の予防や治療につながるとしている。
また、より早期からの腸内フローラへの介入(プロバイオティクス摂取や投与、適切な抗生剤の投与、口腔ケアなど)によって、病期の進行・肝がんを抑える可能性が期待でき、新規の治療法の開発も期待できるとしている。
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