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医師が救急現場に出動する『ドクターカー』。その出動回数は増加傾向にあるものの、医療機関間での回数差は大きく、約7割の施設の『ドクターカー』が休眠状態だという。
ドクターカーの費用はドクターヘリのような公的資金は投入されないため、病院の負担になるケースが多い。
また、119番通報時に消防がどのような基準で医療機関に『ドクターカー』を要請するかどうかといった連携面も重要となる。救急隊が現場に到着してからの『ドクターカー』の要請になると、時間がかかるために救命率にも大きくかかわってくるのだ。
近年、このような運用面での問題を解決するとともに、子どもの患者に特化したり、終末期の在宅患者のみとりに対応をするなど、『ドクターカー』の取り組みに多様化の動きがある。
兵庫県立尼崎総合医療センターでは、救急現場に出動する小児専門ドクターカーを3年前からスタートした。
全国的にも珍しい取り組みだが、特に子どもが起こしやすい「けいれん」などの対応で、活躍が期待される。「けいれん」が長引くと、神経が傷ついてしまい、後遺症の恐れもでてくる。
日本小児神経学会では、5分以上続くと自然に治まりにくいとして、ガイドラインで早期の治療を勧めている。
脳炎や髄膜炎が原因となっての「けいれん」であれば、死亡するケースもあり、抗生薬をいかに早く使うかが重要だ。そのため、結果的に軽症だったとしても、小児科医が現場に出る意義は大きい。
小児専門ドクターカーでは、子どもに異変が起きたと119番通報があった際には、消防が同センターにドクターカーを要請後、小児救急集中治療科のチームが車内で診療を行う仕組みだ。
けいれん以外にも、アナフィラキシー(強いアレルギー反応)は症状が重いと死亡する恐れもある。
車内での子どもの状態によって、同センターでのステロイド薬による治療や、状態が悪ければ車内でアドレナリンを使用するなど、早期に対応できる。
救急隊の救急救命士が気管挿管やアドレナリンの使用などは行えることと、出動要請全てに応える人的・費用的負担も大きいことから、現状出動要請を精査し、絞り込む段階だという。
岐阜県中津川市民病院では、2014年にドクターカーの運用を開始。心臓の異常による心停止患者の1カ月生存率が大幅に改善し、全国平均も上回るようになった。
その一方で、心停止した患者の蘇生を現場で試みても助からないケースや、再び心臓が動いてもすぐに止まる可能性が高く、近くに高度な救命医療を受けられる救命救急センターがないケースなどでは、患者が終末期で救命が困難で、本人や家族が延命治療を望んでいなければ、ドクターカーの医師が自宅などの現場でみとりに対応する案件も出てきた。
同病院の救急診療科では、医師の少ないへき地では訪問診療をしている医師だけでみとりに対応するのは限界があり、ドクターカーの医師がそのすき間を埋める役割になるとしている。
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