魚介類の摂取で「うつ病」のリスクが低下
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生活習慣は、がん・脳卒中・心筋梗塞などの様々な病気と関連しており、国内では、生活習慣病予防や健康寿命の延伸を目的とした多目的コホート研究が行われている。
また近年では、うつ病の予防として、適切な栄養を摂取することが注目されており、魚介類（特に青魚に多く含まれる「n-3系脂肪酸」）とうつ病の関連を調べる研究が進んでいる。
国立がん研究センターでは9月27日、多目的コホート研究（JPHC Study）によって、魚介類・n-3不飽和脂肪酸の摂取がうつ病の発症リスクを低下するとの結果を発表した。
同研究成果は、「Translational Psychiatry」に掲載されている。
青魚に含まれる「n-3系脂肪酸」とうつ病予防
「n（オメガ）-3系脂肪酸」は、不飽和脂肪酸の一種で、抗炎症、免疫調整、神経伝達物質調整、神経保護などの効果が抗うつ効果を示すとも言われる。
メタアナリシス（複数の研究結果をまとめて解析）から、「うつ病患者は健常者と比較して血液中のn-3系脂肪酸が低い」、「n-3系脂肪酸サプリメント（エイコサペンタエン酸（EPA）含有率が高いもの）はうつ病治療に有益」なども欧米諸国で報告されている。
一方で、日本人のデータは少なく、精神科医によるうつ病診断を厳密に行った研究も含まれていなかった。
国内の多目的コホート研究（JPHC Study）から調査
今回、同研究グループでは、日本人における魚介類・n-3系脂肪酸摂取と精神科医により診断されたうつ病との関連として、長野県佐久保健所管内の南佐久郡8町村に在住（1990年時点）の約1万2,000人（40～59歳）のうち、2014～15年に実施した「こころの検診」に参加した1,181人の追跡調査から、魚介類（さけ・ます、かつお・まぐろ、あじ・いわし、しらす、タラコといった魚卵、ウナギ、イカ、タコ、エビ、アサリ・シジミといった貝類、かまぼこといった加工食品、干物、など19質問項目）・n-3不飽和脂肪酸（＝n-3系脂肪酸）の摂取とうつ病との関連を調査した。（1,181人のうち、精神科医によってうつ病と診断されていたのは95人。）
魚介類・n-3系脂肪酸の摂取量を基準に、対象者を4つのグループに分けて比較した結果、「1日57g（中央値）魚介類を食べるグループ」よりも、「1日111g（中央値）魚介類を食べるグループ」ではうつ病リスクの低下がみられた。
また、「1日200mg（中央値）エイコサペンタエン酸（EPA）を摂取するグループ」よりも「1日307mg（中央値）エイコサペンタエン酸（EPA）を摂取するグループ」、また、「1日67mg（中央値）ドコサペンタエン酸（DPA）を摂取するグループ」よりも、「1日123mg（中央値）ドコサペンタエン酸（DPA）を摂取するグループ」でそれぞれうつ病リスクの低下がみられた。
魚介類の「適量」の摂取が効果的
今回、中年期の魚介類・n-3系脂肪酸の摂取が精神科医による高齢期のうつ病診断に関連していたという結果は世界初の報告であり、これまでのメタアナリシスを支持する結果でもある。
また、魚介類・n-3系脂肪酸摂取とうつ病の関連では、「ある量でうつ病リスクが下がり、それ以上摂取してもうつ病予防への影響はみられない」ことも示された。
同研究グループでは、今回の検討は該当地域の14％の対象者のみが調査参加したものであるため、より研究結果の蓄積が必要になるともしている。
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