十二指腸がんの術後再発、自家小腸移植

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慶應義塾大学は7月4日、北川雄光氏(同大学医学部外科学(一般・消化器)教室教授)、日比泰造氏(同専任講師)、加藤友朗氏(コロンビア大学医学部外科学教授)らが、「ポイツ・イエーガー(Peutz-Jeghers)症候群」に起因した十二指腸がんの切除後再発に対する体外切除・自家移植に成功したと発表した。

同手術は今年2月に慶應義塾大学病院で行われたもので、これまで世界での報告例はなかった。

ポイツ・イエーガー症候群に起因した十二指腸がん

「ポイツ・イエーガー症候群」の特徴は、皮膚粘膜に色素沈着を起こし、消化管に過誤腫性ポリポーシスを多発、さらに高率でがんを発症する疾患だ。

今回の手術対象となったのは38歳の男性。幼少時からポリープに伴う腸重積と巨大ポリープの開腹手術を3回経験。4回目の手術では、十二指腸の2つの腺がん病変を発見(定期検診による)したため、膵臓の頭部を温存したまま、十二指腸をほぼ全て切除する手術(膵頭温存十二指腸亜全摘術)を行っている。

しかし、術後2年5ヶ月が経過した時点で、再発病変(上腸間膜動脈根部を全周性に取り巻くように発育、血管浸潤を来たす)が確認されたため、その後は化学療法を実施。

再発指摘から1年9ヶ月(初回手術後4年2ヶ月)が経過した時点で、病変の明らかな増大は見られず、転移・腹膜播種などの所見も認めなかったため、患者や患者の家族から病変の切除について強い希望があったとしている。

手術前とほぼ同様の健康状態で退院

同手術では、再発腫瘍(周囲臓器と重要血管に浸潤をきたす)を一塊に切除(健常な小腸・回盲部までを含む)した後に、体外切除によって健常な小腸(腫瘍の浸潤がない)と再発腫瘍(浸潤をきたす部分)を切離して病変部位を切除

膵胃吻合と遠位脾腎静脈吻合(シャント)を行っていた体内で、腹腔内に健常な小腸・回盲部を戻し、動脈と門脈を吻合、腸管血流を再開した。(胆汁と食物の通過路の再建、回盲部の人工肛門の造設)

『最終病理組織診断』によると、剥離面・切除断端に腫瘍細胞の露出はみられず(完全治癒切除)、手術後に膵液漏・胃内容排泄遅延を認めたが、重大な合併症はなし。すでに患者は術前とほぼ同様の日常生活動作を取り戻し、退院したという

世界初の実施例に

生命維持に不可欠な動脈(上腸間膜動脈・腹腔動脈)に腫瘍が浸潤し、通常切除不能な症例に対して、腹部臓器(小腸を含む)の体外切除・自家移植は、1996年に初めて報告されているが、それ以降は文献上で数十例を確認するにとどまっていた。また、「ポイツ・イエーガー症候群」に合併した十二指腸がんの再発に対しては、今回が世界初の実施例となっている。

慶大病院では、今回の患者の病態に応じて、同手術の適応を検討していく予定としており、今後の経過観察を待つ必要があるものの、同症例のような再発がん(複数回の開腹歴を有する)であっても、病変の治癒切除を安全に施行できた点は大きな成果となりそうだ。

公開日 :2017.09.06 更新日 :2021.10.06

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