糖脂質と受容体の結合で「免疫系」が活性化、ゴーシェ病治療など

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乳児期から発症する希少難病の一つである「ゴーシェ病」は、国内における患者数は150人程度と非常に少ない。同疾患の発症原因は、酵素「グルコセレブロシダーゼ」の不足・欠損による先天性代謝異常とされ、肝臓の腫れ(肝脾腫)、貧血や神経障害、進行性の骨疾患(骨折)など重篤な全身性の症状を招く。点滴によって酵素(グルコセレブシロターゼ)を補う『酵素補充療法』や糖脂質(糖セラミド)の「グルコシルセラミド」の合成を抑制する『基質合成抑制療法』などの治療が行われる。

九州大学では4月4日、山崎晶氏(同大生体防御医学研究所、大阪大学微生物病研究所教授ら)の研究グループが、ゴーシェ病に関連する糖脂質の「グルコシルセラミド」は『ミンクル』と呼ばれる受容体と結合して免疫系を活性化する役割を持っていることを発見したと発表した。

同研究成果は、4月3日付けの米国科学アカデミー紀要「Proc. Natl. Acad. Sci. USA」(電子版)に掲載されている。

免疫系を活性化し、死細胞の糖脂質を認識する受容体の「ミンクル」

同研究グループでは2008年に、細胞死を感知して免疫系を活性化する受容体として「ミンクル」を同定。免疫系は、外来からの病原体(非自己物質)の侵入や自己細胞の障害を受けたがん細胞などを認識して活性化し、損傷した部位を取り除く働きを担う。

また、同研究グループでは並行研究で、この「ミンクル」が病原体の糖脂質を認識する性質を持つことも発見しており、「ミンクル」が死細胞を感知するメカニズムにおいて細胞損傷によって放出される糖脂質を認識することが重要な役割を担うことが推測されていた。

死細胞から培養した培養液の脂質成分を抽出した調査では、脂質成分の「グルコシルセラミド」がミンクルに結合して活性することを発見。通常、このグルコシルセラミドは細胞内に存在している糖脂質だが、死細胞では細胞損傷に伴い細胞外に放出されたことも分かった。また、グルコシルセラミド投与マウスの免疫系は活性化する一方で、ミンクル欠損マウスでは免疫系の活性化の効果が失われることも判明したという。

ミンクルをブロックする阻害抗体などの開発

「グルコシルセラミド」が蓄積すること発症する疾患としては、難病指定のゴーシェ病・パーキンソン病などが知られている。

同研究グループが行った疾患(グルコシルセラミド蓄積)モデルマウスによる実験では、ミンクルを欠損させるとグルコシルセラミドの蓄積を伴った炎症応答の増悪が改善されることも明らかになったという。

同研究グループでは、今後の治療薬開発に繋げるために「ミンクル」を効率よくブロックできる阻害抗体や低分子アンタゴニストの開発を進め、ゴーシェ病やパーキンソン病の動物モデルでのミンクルの阻害による治療効果を詳細に調べる方針だ。

ゴーシェ病やパーキンソン病の新治療薬の標的に

今回の研成果究から、自己の組織損傷を感知した際に、免疫系を活性化させる生体内の分子メカニズムが明らかになった。さらに「グルコシルセラミド」の過剰蓄積や疾患発症時の「ミンクル」の存在は炎症応答を増悪させて疾患の原因になるケースがあることも確認された。

今後、この「ミンクル-グルコシルセラミド」経路の研究を進めることで、ゴーシェ病やパーキンソン病の新治療薬の標的になることが期待される。

公開日 :2017.06.05 更新日 :2021.10.06

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