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米ニューヨークの病院で、母親の卵子から遺伝情報を含んだ核を取り出し、別の女性の卵子に移植して受精させる「ミトコンドリア置換」と呼ばれる方法で、父親を含む3人の遺伝子を持つ男児を出産させることに成功したことを今年9月に英科学誌ニューサイエンティストか報じた。
また、10月にはウクライナの病院で同様の方法で不妊治療を行っており、2人の子どもが来年にも生まれる予定だと報じている。
次々に『「3人の遺伝子」を持つ子ども』が生まれるとされる中で、安全性や倫理面での問題を巡っては様々な論議を呼んでいる。
卵子にも含まれるミトコンドリアは、細胞内の核以外の部位(細胞質)に含まれている小器官。独自のDNAを持っており、「エネルギーを産み出す」、「感染を防御する」などの機能がある。ミトコンドリア異常があると脳・筋肉、心臓などで様々な疾患が生じる。
すでに誕生した男児の両親はともにヨルダン人。母親がミトコンドリア異常を起因とする遺伝性の難病で、精神発達の遅れや筋力低下などの症状が出る「リー脳症」のために、過去には2人の子どもが出産後に亡くなり、4度の流産をしていた。
「ミトコンドリア置換法」では、現時点ではこの母親のような重篤なミトコンドリア病の患者が出産する唯一の解決法になっている。
米ニューヨークの病院チームでは、この母親のミトコンドリアの遺伝子変異を引き継がずに卵子の核だけを取り出し、健康な第三者の女性の核を除いた卵子に移植し、父親の精子と体外受精させた。
そのため、子どもは両親と卵子提供女性の「3人の遺伝子」を受け継いでいることになる。その後、母親は今年4月に男児を出産しており、健康に影響は出ていないとしている。
遺伝情報を含んだ卵子の核移植に関しては、イギリスで昨年2月から科学的検討も踏まえ、重い遺伝病の女性を限定対象に「ミトコンドリア置換」の臨床応用を世界で初めて認めた。しかし、第3者の女性の卵子に存在するミトコンドリアから引き継がれる遺伝子はごくわずかであるというものの、未だ不明な点は多く、治療薬に反対や慎重な意見も多い。
今後はその継続的な検証と十分な情報開示が不可欠になってくる。アメリカ国内ではこのミトコンドリア置換法が認められていないため、治療はメキシコで実施されたということだ。
一方、日本国内ではこのミトコンドリア置換に関する法規制はなく、すでに一部のクリニックで基礎研究が実施されている。
ミトコンドリア置換による治療法は、ミトコンドリア異常が原因となる病気の根本治療になる可能性はあるため、臨床応用は将来的の検討課題にはなってくる。
しかし、ミトコンドリア病の発生頻度は人種によっても異なり、倫理的な問題もあることからコンセンサスはまだ得にくくいとされる。
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