PTSD治療にはトラウマ直後からのケアが重要、筑波大など

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長野県北佐久郡軽井沢町で1月15日未明に起きたスキーバス転落事故。
運転手と乗客41人のうち、乗客だった20歳前後の大学生12人を含む15人が死亡するという大惨事になった
生き残った大学生は友人や同乗者の突然の死に直面して強いショックを受けて、生き残った自分に罪悪感を抱く「サバイバーズ・ギルト」や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に陥る可能性があるため、今後の精神的なケアが求められる。
これまで心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、その治療においては症状が明らかになってからの研究が多く、トラウマ直後のケアの重要性については認知されていない点が多かったが、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の坂口昌徳准教授らの共同研究グループでは、ある出来事によって強い精神的ストレスを受けた直後では、関係のないような物事でもそのストレスを受けた出来事の記憶と結びつきやすいとする論文を2016年1月8日付けのMolecular Brain誌(電子版)に掲載している。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

心的外傷後ストレス障害(PTSD:Post Traumatic Stress Disorder)は、いじめ、虐待、交通事故、地震などによるショック体験や精神的ストレスが強いトラウマ体験となって、その後時間が経過しても日常生活の場面でも強い恐怖反応を伴う症状だ。
また心的外傷による不安・不眠、フラッシュバック、回避行動なども引き起こす。
PTSD患者の脳では、一見かけ離れている場所や事柄でもトラウマ記憶と結びついてしまう広範囲な「記憶の汎化(はんか)」という現象が生じやすい。
トラウマ記憶がよみがえることで戦慄・恐怖・逃避などが認められ、恐怖反応を防ぐためにその場所や状況からの回避行動へ繋げたり、日常生活自体が困難になる場合もある。

迅速な精神的ケアの重要性

今回、同研究グループが行ったマウス実験では、精神的ストレスを受けた6時間以内においては、この「記憶の汎化」を引き起こしやすいことを発見した。
さらに6時間以内というトラウマ直後のマウスが「慣れ親しんだ場所」にいると、その場所に特に汎化が起こりやすいことも判明している。
今回の結果を同研究グループでは、「トラウマ直後からの積極的に『心の傷』の迅速なケアを行うことが汎化の予防に重要になることを示唆している」としている。
今後は、実際の患者での検討も続けて行く必要がある。

PTSDの脳内メカニズムや睡眠との関係も研究

脳科学分野では、記憶に関わる脳の海馬で新生・再生する「ニューロン」が「記憶の汎化」に重要な役割をもつことが明らかになっており、今後、「ニューロン」と「記憶の汎化」における脳内メカニズムの解明も期待される。 また同研究グループではさらに、PTSDの患者全般に睡眠障害が見られ、睡眠とトラウマ記憶との関係が強く示唆されていることから、「睡眠」と「記憶の汎化」についての関係も研究中だという。 それらの研究により今後、PTSDの予防や治療効果が高まることに活かされると期待したい。

公開日 :2016.03.16 更新日 :2021.10.06

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