「ウェアラブル体温計」は厚さわずか0.015ミリ、東大が開発

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健康診断や婦人科検診、バイタルチェックなど様々な場面で用いられる「体温計」。
女性向けの(婦人用)体温計では、生理周期などの身体のサイクルを把握するために基礎体温を測定できる。
また従来は測定時間が10分ほどの体温計が一般的だったが、最近では、わずか数十秒で体温を測定できるものが販売されている。
今回、東京大学はアメリカ・テキサス大学との共同研究チームによって新しい「ウェアラブル体温計」を開発した。
皮膚に貼り付けると瞬時に正確な体温を測定できる薄いシート状の体温計で、11月9日付のアメリカ科学アカデミー紀要誌(電子版)に発表している。
この「ウェアラブル体温計」は薄くて軟らかく、くにゃくにゃと曲げることが出来て、絆創膏のように皮膚に張り付けることが出来るという。

厚さ0.015ミリのシート状の体温計

体温計は、厚さ0.015ミリのプラスチックのシート状で、シートに塗られたインクが温度センサーの役割をして、体にくっつけると体温によってわずかにインクが膨張して体温を測定する。
インクは従来、印刷などで使われている素材だが研究グループでは以前からこの印刷技術に着目していたようだ。
同研究グループでは、今年6月に「電気を通すインク」を開発しており、このインクを塗ったスポーツウェアなどの布地から人の神経や筋肉の動きを計測する研究していた。
今回は、この「電気を通すインク」を薄いプラスチックのシートに塗って、人の体温の変化によってインクの電気抵抗(電気の通りにくさ)が変化する仕組みを作ることに成功した。

誤差は0.02℃と高精度

研究グループが開発した体温計を利用して行った実験では、外気温25℃において、体温37℃のラットの肺の表面に体温計を貼り、ラットの呼吸運動に伴う体温変化を測定したところ、息を吸った時と吐いた時の温度差が約0.1℃と小さいことを実証した。
この体温計は測定感度が0.02℃と高精度で、応答速度も100ミリ秒と高速になっている
また、1,000回以上測定を繰り返しても再現性が失われないことも確認された。

3年で実用化、医療分野などに応用

電気を通す新しい素材の研究を進めており、今回この体温計を開発した研究グループの染谷隆夫教授(東京大学・電子工学)によると、「(体温計は)絆創膏のように貼り付け、赤ちゃんの体温をモニターできる。 また、(体のさまざまな場所に同時に貼り付けられることも出来るため)ケガの患部に炎症による発熱が無いかなどの観察も継続的に行える」と話しており、医療分野への応用が期待できるという。
また、同研究グループの横田知之特任助教は、「材料はとても安く、使い捨てが可能なほど低コストでかつ簡単に作成が出来る。 医療分野以外にも、スポーツウェアの開発段階で体のさまざまな部分の温度分布を調べるなど幅広い分野に応用できる」と話す。
研究チームでは、今回開発した仕組みをつなぐ電源や表示機器の小型化を検討し、3年ほどでの実用化を目指している

公開日 :2015.12.27 更新日 :2021.10.06

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