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体内の尿酸の約8割は、腎臓から尿のなかに溶けた状態で排泄される。
しかし、この排泄量が少ないケースや、体内で尿酸が生成されすぎて排泄が間に合わないケース、その両方が起こるケースでは、血液中の尿酸が増加する。
「高尿酸血症」は、この血液中の尿酸が正常値を超えて高くなった状態だか、痛風を引き起こすとともに高血圧症、糖尿病、動脈硬化症などの生活習慣病や腎機能障害にも関連するとされる疾患。
一方、「低尿酸血症(血液中の尿酸が著しく低い状態)」では急性腎不全や血管内皮障害を引き起こすことが分かっている。
これらの疾患の原因は、尿酸値の上昇・低下に伴い、過酸化ラジカル・酸化ストレスなどが増加して微細動脈の血管障害を引き起こすこととされるが、そのメカニズムは解明されていない部分も多く、ヒトの腎臓では微細血管障害がみられるのか確認されていなかった。
大阪市立大学では6月1日、上殿英記氏(同大医学研究科代謝内分泌病態内科学・腎臓病態内科学大学院生)、津田昌宏氏(同講師)、石村栄治氏(同特任教授)らの研究グループが、『血清尿酸値』が正常範囲内であっても、腎臓への血流や機能は低下することを突き止めたと発表した。
同研究成果は、同日付けの米生理学会誌「American Journal of Physiology-Renal Physiology」(電子版)に掲載されている。
今回同研究グループでは、腎移植ドナー候補者48名を対象にして、腎機能と尿酸の関連についての検討を実施。(候補者は、「蛋白尿陰性」、「糸球体濾過率(GFR)60ml/min/1.73m2〜」、「腎機能が正常」で高尿酸血症・その他の生活習慣病がない健康な人で、かつ移植ドナーとなりうるのかを腎臓の精密な機能精査を受けるために同学附属病院に入院していた人。)
腎臓の機能・血流量による評価では、「イヌリンクリアランス(Cin)」・「パラアミノ馬尿酸クリアランス(Cpah)」を採用して、輸入細動脈を含む微細動脈の血管抵抗値の算出では、この方法で測定したCin、Cpah、血圧と血中の総タンパク濃度を計算式(Gomezの式)で計算、腎臓における微細動脈の抵抗値を計算した。
検討の結果から、尿酸が正常値の範囲内であっても、軽度の高値(あるいは低値)の状態であれば腎臓の微細動脈の血管抵抗値は上昇して、腎機能の低下と関連することが分かった。
尿酸値が正常値より高い場合だけでなく、正常値よりも低い場合でも腎機能低下や腎血流の低下がみられるという結果になっている。
これらの研究成果から、腎臓の保護という観点では、従来想定されていた血清尿酸値の範囲内(高尿酸血症7.0mg/dL以上、低尿酸血症2.0mg/dL以下)ではなく、それよりもさらに狭い範囲内で尿酸値を正常に保つことが重要になることが明らかになった。
同研究グループでは現在、尿酸低下薬の薬物治療を行うことにより、腎臓の機能や微細動脈血管抵抗値がどのように変化するかについての研究を進めているという。
また、適正な尿酸値コントロールを行うことによって、腎不全などの腎臓病や尿酸値に起因した生活習慣病が予防できるようになることを目指すともしている。
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