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ヒトの概日リズムである「睡眠」と「覚醒」。これによる健康維持は身体のさまざまな機能に影響を与えているとされており、また睡眠は記憶などにも関わると考えられている。
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)では、柳沢正史同機構長と船戸弘正同教授らの研究チームが睡眠と覚醒をコントロールする2つの新たな遺伝子変異を発見したと発表した。
同研究は理化学研究所や国立長寿医療研究センターなどとの共同研究チームによるものだ。
ヒトの生活では一般的に一日24時間のうちでおよそ3分の1に当たる7〜8時間は睡眠時間として占められている。
またヒトを含む哺乳類や鳥類などでは、この睡眠時間中により深い眠りとされる『ノンレム睡眠』と浅い眠りと言われる『レム睡眠』を交互に繰り返していることも知られている。
健康なヒトでは、入眠後にはまず深い眠り(ノンレム睡眠)に入り、次に体は休んでいるが脳は活発に働いている浅い眠り(レム睡眠)に変わり、また深い眠りに変わるということを何度か繰り返してから起床するというサイクルがある。
このような睡眠の仕組みは、身体の健康や脳の記憶などにも影響していると考えられているものの、睡眠と覚醒の切り替えのメカニズムなど解明されていない点も多い。
今回、同研究チームでは脳神経細胞などに人為的にあらゆる遺伝子変異を起こしたマウスを約8000匹作製して、脳波分析によりそれらのマウスを「睡眠時間が長い」グループと「レム睡眠時間が短い」グループに分け、遺伝子変異の睡眠への影響について調べている。
その結果、「睡眠時間が長い」グループのマウスでは『Sik3』遺伝子、「レム睡眠時間が短い」のグループのマウスでは『Nalcn』遺伝子に各グループ内のマウスで共通して遺伝子異常が見つかった。
同研究チームによると、『Sik3』遺伝子はノンレム睡眠の必要量を決定しており、変異すると睡眠時間が大幅に増え、『Nalcn』遺伝子はレム睡眠の終わりに関わり、変異するとレム睡眠が大幅に減少するという。また『Sik3』遺伝子は、マウス以外の生体でもショウジョウバエや線虫などで睡眠状態を制御していることも確認されたという。
これらの2つの遺伝子の働きを特定したことで、今後は睡眠のメカニズム解明に役立つほか、睡眠と覚醒を「切り替える」仕組みが明らかになることで、睡眠障害の新たな治療法開発にもつながると期待している。
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