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豚やヤギなどの動物の臓器や細胞をヒトに移植する「異種移植」。
これまで国内でこの異種移植を行うことは禁じられていたが、今回、厚生労働省の研究班では異種移植を禁じていたガイドラインを一部緩和する。
それに並行して国内初の臨床研究として計画が進んでいるのは「豚の細胞」の移植だ。
国立国際医療研究センター研究所(東京都新宿区)などの研究グループでは、1型糖尿病の患者に豚の膵島(すいとう)細胞の移植を計画している。
この膵島細胞は血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌するため、患者が治療で強いられるインスリン注射の負担を減らせる可能性がある。
近年、世界的に研究されている異種移植は、ヒトからの臓器移植の提供が足りないことを解決する手段として注目され、臓器の大きさがヒトに近いことや維持管理がしやすいことから、主な対象は豚の細胞になっている。
移植による拒絶反応を起こさないように、ヒトの免疫細胞や抗体を通さない特殊な膜でブタの細胞を包む技術も実用化され、海外ではすでにヒトの治療に応用され始めている。
糖尿病全体の1~3%を占める1型糖尿病では膵島細胞が機能せずにインスリンが分泌できなくなる。
発症すると長期的に本来必要となる量のインスリンを注射する治療を行わなければならない。
一方でヒトからの膵島の提供は少なく、ヒト同士の間で移植手術を行うことは極めて難しい。
これまで厚労省研究班が2001年度に作ったガイドラインでは、豚の遺伝子に組み込まれたウイルスが持つヒトへの感染の危険性を取り除くことは難しいとしてきたことで、これまで豚の膵島の移植が実施されたことはなかった。
しかし、海外ではこの豚の持つウイルスがヒトに感染した事例の報告はなく、今回危険性の評価を見直し、新しいガイドラインでは移植後30年間経過を観察することを条件に移植を認めることになった。
5月の厚労省の部会で報告されれば、事実上の解禁となる。
同研究グループは安全面や動物の細胞をヒトに利用するという倫理面などについて第三者委員会の評価を諮った後、2~3年後には患者への移植を行う方針だ。異種移植の実現で膵島の不足解消を目指す。
異種移植をめぐっては、近年、国際学会でもその規則に関する議論が活発になり、環境も整ってきている。
すでにニュージーランドでは、ベンチャー企業が豚の膵島細胞をカプセル化した薬を開発しており、同国やアルゼンチンなどの1型糖尿病の患者に移植されて効果が確認されている。
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