世界で最も細い人工血管を開発、国立循環器病研究センター

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人工物を縫いつけることによって血管の代わりにする「人工血管」。
本来、血液は血管の中ならスムーズに流れるが、人工血管の中を通すと、ほとんどの場合は内側表面で凝固してしまう。
国内における最先端の循環器病研究を進める国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)では11月2日、直径0.6ミリの世界で最も細い人工血管を開発したと発表した。

「心臓病」・「脳卒中」などの循環器病の最先端医療を提供・研究

血液やリンパ液などの体液を体内で輸送し循環させる働きを持つ「循環器」(心臓、血管など)の機能が何らかの原因で破綻し、正常に働かなくなる状態が「循環器病」だ。
三大疾病にも含まれる「心臓病」・「脳卒中」の他、大動脈を含めた血管疾患、「高血圧症」などが代表的な循環器疾患で、広義には糖尿病や脂質異常症、それらから引き起こされる腎臓病なども含まれ、生活習慣に起因して発症する疾患も少なくない。
国では日本人の三大死因のうちの2つ(心臓病、脳卒中)を占める循環器病のメカニズム究明と克服に向けて、国家戦略としての取り組みを推進している
国立循環器病研究センターでは、病院内に「心臓血管部門」と「脳血管部門」が併設され、それぞれが連携して最先端の医療を提供している。 また、2010年4月に新たに設立された「研究開発基盤センター」では、臨床研究・疫学調査の推進、知的資産の活用など複合領域の研究を行っている。

コラーゲンのチューブを人工血管に

今回の開発には、患者自身の組織から移植する組織体を作製する「生体内組織形成術」という再生医療技術が用いられた。
同センターの研究グループでは、シリコンで覆った極細ステンレス棒を鋳型(いがた)のように実験用ラットの皮下に埋め込み、2ヶ月間後に取り出すことで、シリコンの周りをラットの体内のコラーゲン組織が覆い、コラーゲンによるチューブ(マイクロバイオチューブ)を作ることに成功した。このチューブを同じラットの血管の一部として移植して半年間の経過を観察したところ、この人工血管内の血流が維持されていることが確認できたという。

様々な太さの血管手術へ応用を期待

研究グループの中山泰秀氏(医工学材料研究室長)によると「(開発された人工血管は)自分の組織から作った血管なので拒絶反応もない。 様々な太さの血管手術に応用できる可能性がある」と言う。
現在、臨床で用いられている人工血管はいずれも直径約5ミリ以上ある。
それら従来の人工血管に代わって、これまで不可能だった脳や心臓の血管バイパス手術などへの応用も期待されている。

公開日 :2015.12.14 更新日 :2021.10.06

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