全てのHIV感染者に抗ウイルス薬、WHOが新ガイドライン

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世界保健機関(WHO)は9月30日に、HIV検査で陽性反応を示したエイズを引き起こすウイルス(HIV)感染者全てに、できるだけ早くウイルス感染症の治療薬(抗HIV薬)を用いた治療を開始するべきとする新たなガイドラインを発表した。
同月に国連において「2030年までにエイズの流行を終わらせる」という目標が掲げられたことを受けて、その対策強化に乗り出している。

投薬治療のタイミングに新基準

エイズ治療では現在、複数の抗HIV薬を服用する多剤併用療法(抗レトロウイルス療法、ARV治療)が行われている。
WHOは2013年に出していた従来のガイドラインでは、免疫系の「CD4」と呼ばれる細胞の損傷が一定の水準に達した時点(血液1㎣中500以下)での抗HIV薬の投薬治療開始を勧めていた
一部の治療薬には副作用があり、その時点までは投薬のリスクが利点を上回ってしまうことが懸念されていたことも一因だった。
しかし、今回のWHOの発表によると、最近の治験における抗HIV薬の「早期治療」ではHIV感染者の生存を維持し、健康を向上させ、ウイルスを他人に伝染させるリスクも軽減させることが明らかになったとしている。
抗HIV薬も改良されてきており、副作用も少なくなっているという。 今回の新ガイドラインでは、HIV感染が確認された場合は、CD4の値に関係なくすぐに治療を開始するべきだとしている。
これにより、抗レトロウイルス療法の対象となるHIV感染者は2,800万人から世界全体の全てのHIV陽性者3,700万人に増えるという。

2000年からの14年間でのHIV新規感染者数は約35%減少

国連合同エイズ計画(UNAIDS)では7月14日に、HIVの新規感染者数が2000年の年間約310万人から2014年には約200万人と約35%減少したと発表し、2015年に達成期限を迎えた「MDGs(国連ミレニアム開発目標)」におけるエイズに関する目標を達成していたことを明らかにしていた。 これまでの世界各地でのHIV感染の拡大に歯止めがかかり、状況が反転した形だ。
また、2014年のエイズ関連の死者数は、2005年と比較して約41%減少したという。
さらに、2014年に抗HIV薬を手に入れることができた人は2000年の22倍になり、全HIV患者の約4割が投薬を受けられるようになったという。

2030年までに2,100万人のエイズ関連死を防止

国連で今年9月に採択された2030年までの新たな目標「SDGs(持続可能な開発目標)」では、17分野・169項目を対象に多岐な取り組みの目標が設定されており、その中で、「エイズの流行を終わらせること」も目標の一つに掲げられている。
UNAIDSによると、今回の新しいガイドライン通りに全てのHIV感染者の早期治療が実現すれば、2030年までに2,100万人のエイズ関連死を防ぐことが可能だという。
しかし、対象となる3,700万人にどのように治療を受けさせるかという課題が残る。 2014年に治療を受けていたHIV感染者に1,500万人にとどまっている。 UNAIDSでは、今後はエイズがまん延するサハラ砂漠以南のアフリカでの対策に多額の資金が必要だとして、国際社会の継続的な支援を訴えている。

公開日 :2015.12.04 更新日 :2021.10.06

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