信州大が「さざむし」のシルク遺伝子を発見、医療用新素材に

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前回のコラムでは、豚のコラーゲンを応用した医療用新素材「絆創膏型人工皮膚」を紹介したが、お次は「さざむし」の糸(シルク)が手術の縫合などに役立つかもしれないという話だ
(臨床検査技師士コラム :佐賀大と生物研、絆創膏型の人工皮膚を開発も参照)

この「さざむし」はカワゲラ、トビケラなどの水生昆虫の幼虫のことで、主に生息している長野県伊那地方(南信地方)などでは食用ともされており、佃(つくだ)煮や揚げ物などにして食されている。
信州大学繊維学部(上田市)の研究グループ「水生生物ファイバー工学共同プロジェクト」は、この「さざむし」が出す糸(シルク)の遺伝子を発見したと、8月28日付けのオランダの生化学分野の学術雑誌「Biochemical and Biophysical Research Communications 」に掲載された。
タンパク質でできた糸は水中で固まって接着力があるため、大量生産できれば、新しい生物由来の繊維「ざざむしシルク」として、手術用の新素材や再生医療分野に応用できる可能性がありそうだ。

「さざむし」が出す高強度の糸(シルク)

同グループでは、千曲川や天竜川など信州地域の河川に多く生息にすみ、食用とされる「さざむし」のほとんどを占める「ヒゲナガカワトビケラ」(体長約2~3センチ)を研究用として用いた。
シルクといえば「カイコ」が有名だが、今回はそれとは全く異なる将来的に新しいバイオファイバー(タンパク質性繊維)素材の開発や応用につながる発見となった。
「ヒゲナガカワトビケラ」の幼虫(=さざむし)は、体内に接着力がある糸の元となるタンパク質を持っている。
これを口から糸にして出し、小石の間に網を張ることで、流れてくる落ち葉くずを引っかけ食べる。
糸で出来た網は川の流れでも壊れない程の高強度だ。

糸(シルク)の元となるタンパク質の遺伝子解析

同グループによるこれまでの研究で、「ヒゲナガカワトビケラ」の幼虫の糸を作っている主な水生シルクタンパク質(Smsp:Stenopsyche marmorata silk proteins)は4種類あることを解明し、Smsp-1の遺伝子の配列の解析に成功していた。
今回、グループはヒゲナガカワトビケラの水生シルクタンパク質Smsp-2、3、4の遺伝子取得と配列解析に成功した。
そのうち、Smsp-2とSmsp-4に関しては、過去に類似の配列が全く報告されていない新規なタンパク質の発見となった。

「大量生産」で手術用や再生医療などに応用

今回の高強度の糸の元になるタンパク質の解析によって、水生昆虫を大量に採集したり飼育等をしなくても、バイオテクノロジーや医工学分野を応用することで同様のシルクタンパク質を効率よく生産できる可能性が出てきた。
同グループでは「工学的な大量生産に向けた第一歩」としている。
また、この微生物によるシルクタンパク質発現系を構築していくことで、「将来的には止血剤や縫合糸などの医療用や、再生医療で細胞培養を助けるための材料に応用に期待できる」としている。

公開日 :2015.11.21 更新日 :2021.10.06

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