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産業技術総合研究所(産総研、茨城県つくば市)では2月8日、科学技術振興機構(JST、埼玉県川口市)が展開する「先端計測分析技術・機器開発プログラム」の一環として、従来の検査時間を大きく短縮した『モバイル遺伝子検査機(小型・軽量リアルタイムPCR装置)』の開発に成功したと発表した。
これは、産総研に加え、高機能ガラス事業などを手掛ける日本板硝子株式会社(大阪府大阪市中央区、森重樹社長)、同社情報通信デバイス事業部が前身で高性能光部品製造を手掛ける株式会社ゴーフォトン(茨城県つくば市、西澤尚文社長)が共同開発したもの。
プロトタイプ(試作機)はすでに研究機関・大学向けに試験的に供給し、実地検証も開始している。発売については、日本板硝子より今年内を目標に開発が進められる方針だとしている。
ノロウイルスやO157のなどの細菌・ウイルスの集団感染や食中毒は近年でも毎年問題になっており、感染予防や早期発見は重要な課題になっている。
一方で、原因細菌・ウイルスの特定にあたっては遺伝子検査が高精度な測定手段になっているものの、従来の検査法で活用されている「PCR装置」は、大型なため消費電力が大きく、高価格であるため専門施設内にのみ導入されていた。
そのため現場から施設内へのサンプル送付が必要になっており、測定時間にも約1時間を要することが普及へのネックになっていた。
今回、産総研では遺伝子検査方法の中で最も普及しているこのPCR法に代わる小型化・軽量化された遺伝子検査機の開発を目的として、薄くて小さなプラスチック基板に作製した「マイクロ流路」に試料を注入して、高温・低温の領域間で試料を高精度で高速移動させることにより遺伝子を増幅させ、蛍光検出器で検出する仕組みを開発した。そこに日本板硝子が開発した「SELFOC(R)マイクロレンズ」技術を利用し、高感度で蛍光を測定できる小型蛍光検出器を採用。
完成した新しい遺伝子検査機の試作機は、モバイル(小型・軽量・高速)の特長を持ちつつ、従来の大型・高価格なPCR装置とほぼ同等の精度を確保し、価格も大幅に低減した。
ただ検査対象ごとに最適化された高速PCR試薬や前処理技術が必要なため、移動中の救急車や航空機の中などでの使用対応などに向けては今後改善が進められるようだ。
それでも今回開発したモバイル遺伝子検査機は、これまで検査の測定に1日以上を要していた従来法とは異なり、適切な前処理かつ高速試薬により、専門施設外でも約10分で迅速な検査を行え、またバッテリー駆動も可能で、ある程度の振動への耐久性も備える。初期段階での感染を特定できれば、迅速な対応も期待できる。
また、食品衛生・感染症予防や環境汚染調査、食品工場や学校などの公共施設などの幅広い分野での活用も期待される。
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